道東地方における「ホクシン」の栽培法
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[要約]
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良質、安定多収のための「ホクシン」の播種適期は9月20日前後、播種量は255粒/u。基肥施用量は総
窒素施用量の3〜4割で、4kg/10a程度とする。晩播は成熟期の遅れ、千粒重、リッター重低下、蛋白の上昇
などが認められる。
北海道立十勝農業試験場・研究部・作物科・土壌肥料科
北海道立中央農業試験場・農産化学部・穀物利用科
[連絡先]0155-62-2431
[部会名]作物
[専門] 栽培
[対象] 麦類
[分類] 指導
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[背景・ねらい]
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小麦新品種「ホクシン」について、良質、安定生産を目的として、道東地方における栽培
技術(播種期、播種量、窒素施肥配分)を確立する。
[成果の内容・特徴]
- 播種期は9月20日前後で、主茎葉数が5〜5.5枚で越冬させると最も安定した収量と
なる。越冬前茎数は1000〜1200本/u程度必要であり、目標穂数はおよそ600〜650本/uで
ある。
- 早播は、越冬前に過繁茂になり、収量に結びつかないことがあり、晩播は低収になりや
すく、子実蛋白質含有率が過度に上昇しやすい。
- 播種量は適期播種では255粒/uが安定多収となるが、早播は、過繁茂を回避するため
に、170粒/uとする。また、晩播は、年次によっては規格外が発生するが、播種量は340粒
/uとし、穂数を増加させることによって、収量の低下をある程度緩和できる(図1)。
- 早播では、起生期の窒素施用割合を高めることで、明らかに高収となるが、播種期が遅
れるにともない、窒素施肥法間の差異がみられなくなる(図2)。
- 総窒素施用量は、当面現行施肥標準程度とし、「ホクシン」も「チホクコムギ」と同様
に、基肥施用量は総窒素施用量の3〜4割で、4kg/10a程度とする。
- 過度に蛋白が高い試料は粉色が劣ることがある(図3)。
- 晩播は、成熟期の遅れのために穂発芽の被害に遭いやすく、また、千粒重、リットル重
の低下(図4)、蛋白の適正値を越える上昇など、品質の劣化が認められる。
[成果の活用面・留意点]
- 道東地方(十勝、網走管内)に適用する。
- 播種適期は、各地の秋の気象をもとに、小麦地帯別栽培指針(平成2年度)に準じて決
定する。
- 播種量は発芽率によって調整する。
- 良質小麦の安定生産のためには、晩播は避ける。
- 春の分施は幼穂形成期までに行う。
[その他]
究課題名: 道産小麦の品質向上試験(パート・)
3.栽培法改善による品質向上と安定多収
(1)小麦育成系統(ホクシン)の栽培法確立
予算区分 :受託
研究期間 :平成9年度(平成7年〜平成9年)
研究担当者:深瀬孝子・前野眞司・渡辺祐志・奥村理・宮本裕之・吉田俊幸
発表論文等:深瀬孝子・渡辺祐志・宮本裕之・前野眞司, 秋播小麦の越冬前の生育が収量に
及ぼす影響, 日本作物学会紀事, 第66巻, 別号1, 1997
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