黒毛和種去勢牛の肥育効率・肉質の向上をめざした濃厚飼料の増給パターンおよび配合割合
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[要約]
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黒毛和種去勢牛に対する濃厚飼料の増給パターンは、12か月齢で 5kg/日から開始し16か月齢で 9kg
/日まで増加するパターン(増給速度の目安1.0kg/月)が、肥育効率および肉質からみて最適である。濃厚
飼料の配合割合では、肥育全期間をとおしてトウモロコシ主体の濃厚飼料は十分に利用できるが、大麦主体の
濃厚飼料は好ましくない。また、フスマの配合割合は、肥育全期間をとおして一定にする場合には25%までの
配合が妥当であるが、肥育前期だけでは35%配合でも順調な増体が期待できる。
北海道立新得畜産試験場 家 畜 部 肉牛飼養科 肉牛育種科生産技術部 衛生科
北海道立花・野菜技術センター 専技室
北海道立根釧農業試験場 専技室
[連絡先]01566-4-5321
0125-28-2211
01537-2-2004
[部会名]畜産・草地
[専門] 飼育管理
[対象] 家畜類
[分類] 指導
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[背景・ねらい]
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肥育の早期から濃厚飼料を多給することは産肉性を向上させる上で重要な技術と考えられ
るが、どのようなパターンで濃厚飼料を増給するかについては明確な基準がない。また、近
年肉質の向上や肥育コストの低減を目的として自家配合飼料の利用が盛んになっている。し
かし、エネルギー飼料の主体となるトウモロコシと大麦の配合割合や飼料原料の一つとして
多く用いられるフスマの配合割合が産肉性に及ぼす影響については不明な点が多い。そこ
で、肥育効率・肉質の向上を目的として、3つの場内試験を実施し、それらの結果を踏まえ
て現地実証試験も実施した。
[成果の内容・特徴]
- 試験1.濃厚飼料の増給パターンの差異が増体および肉質に及ぼす影響
濃厚飼料の給与を12か月齢で 5kg/日から開始し15か月齢で 9kg/日まで増加するパター
ン(P1区:増給速度の目安1.5kg/月)、12か月齢で 5kg/日から開始し16か月齢で 9kg/
日まで増加するパターン(P2区:増給速度の目安1.0kg/月)および12か月齢で 4kg/日か
ら開始し17か月齢で 9kg/日まで増加するパターン(P3区:増給速度の目安0.5〜1.0kg/
月)の3処理区を設定した。濃厚飼料は全区とも肥育全期間、トウモロコシと大麦の配合割
合が30%:30%のものを給与した。その結果、P2区は肥育前期の乾物および栄養摂取量の必
要かつ十分量を確保し、中〜後期の飼料摂取量のピークを長く維持した。したがって、増
体、脂肪交雑が優れ、ロース芯面積が大きく、バラ部も厚く、枝肉成績が最も良かった
(表1、図1)。
- 試験2.トウモロコシと大麦の配合割合の差異が増体および肉質に及ぼす影響
肥育全期間をとおしてトウモロコシと大麦の配合割合を50%:10%(5:1区)とした濃厚
飼料を、試験1のP2区の増給パターンで給与すると、増体成績・飼料摂取量・養分摂取量
は、配合割合30%:30%(1:1区)の濃厚飼料を給与した場合と同等であり産肉成績は優っ
た。それに対し、配合割合 10%:50%(1:5区)とした濃厚飼料を給与すると、増体成績・
飼料摂取量・養分摂取量が劣り、健康状態でも問題が多かった(表1、図2)。
- 試験3.フスマの配合割合の差異が増体および肉質に及ぼす影響
フスマ25%配合(25%区)の方が35%配合(35%区)よりも増体成績・飼料摂取量・養分
摂取量ひいては産肉性でやや優った。肥育全期間をとおして配合割合を一定にする場合には
25%までの配合が妥当であると考えられた。また、35%配合は肥育前期の順調な増体を期待
できる(表1、図3)。
- 試験4.現地実証試験
試験1〜3の結果を踏まえ、増給速度の目安を1.0kg/月とする濃厚飼料増給パターンを10
か月齢開始の肥育に適用し、かつ濃厚飼料の配合割合は肥育前期にはフスマ主体、肥育中期
以降はトウモロコシ主体として現地実証試験を実施した結果、肉質等級 4以上率は44.1%と
全道平均の24.8%を大きく上回り、2以下率は13.2%と全道平均の31.1%を大きく下回る良好
な産肉成績が得られた(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 試験成績を基に黒毛和種肥育マニュアルを策定する。
- 各試験の各処理区とも肥育全期間をとおして同一配合割合の濃厚飼料を給与した。
- トウモロコシは、試験1〜3は非加熱粉砕したものおよび試験4は加熱粉砕したものを使用した。
- 粗飼料として、試験1〜3は肥育前期(12〜15か月齢)および肥育後期(23
〜29か月齢)は乾草 を、肥育中期(16〜22か月齢)は稲わらを給与した。試験4は肥育全期
間乾草を給与した。
[その他]
研究課題名:北海道型黒毛和種肥育技術(暫定基準)の緊急開発−飼料給与マニュアルの策
定−
予算区分 :道 費
研究期間 :平成9年度(平成7年〜9年)
研究担当者:佐藤幸信、杉本昌仁、川本 哲、寒河江洋一郎、宮崎 元、川崎 勉、田村千秋、
塚本 達、森本正隆、新名正勝
発表論文等:なし
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