イネドロオイムシの簡便な防除要否判定法
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[要約]
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生産者自らが防除要否を判定し、発生量に対応した適切な防除が実施できるよう、簡便な防除要否判
定法を開発した。調査時期予測法を明らかにしたことと、逐次抽出調査法を取り入れて調査を大幅に簡略化し
たことが特徴である。
北海道立中央農業試験場・稲作部・栽培第二科
北海道立上川農業試験場・研究部・病虫科
[連絡先]0126-26-1518
0166-85-4111
[部会名]生産環境
[専門] 作物虫害
[対象] 稲類
[分類] 指導
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[背景・ねらい]
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イネドロオイムシについて、生産者自らが実施できる簡便な防除要否判定法(簡易モニタ
リング法)を明らかにするとともに、これに関連する発生予測技術の精度向上を図り、北海
道のクリーン農業における発生対応型防除技術の定着を図る。
[成果の内容・特徴]
要防除水準を活用した本種の薬剤防除は、卵塊数(孵化殻は除く)によって防除要否を判断
し(2.0卵塊以上/株が要防除、1.0卵塊以下が防除不要)、幼虫加害初期に薬剤を散布するの
が基本である。以下のように卵塊数を調査すれば、簡便に防除要否が判定できる。
- 卵塊の数え方:調査は、1〜3粒程度の小卵塊や葉裏の卵塊の数え落しに特に注意をせ
ず、能率的に行う。
- 調査時期:適期は、卵塊数がピークとなる時を中心とした10日前後の期間である。以下
のいずれかの方法を用い、圃場観察を励行するとともに、発生予察情報を活用する。
(1) 卵塊の孵化状況を目安に調査適期を知ることができる。適期は、孵化殻(塊)の数が 卵塊
数の1〜5割になった頃から卵塊数とほぼ等しくなった頃までである(図1)。
(2) 5月21日以降に最高気温が初めて25℃を超えたら、その日付け(5月X日)と式 Y=15.18 +
0.298X によって調査適期(6月Y日)を求めることができる(早見表:表1)。
(3) 指導機関が有効積算温度法で調査適期を求める場合は、11.5℃(T0)以上の積算温度 (K)
が越冬後192日度に達した日とする。
- 調査水田:調査は、全水田に対してでなく、苗質や移植時期が異なる水田、小型の水
田、屋敷や立木に囲まれた水田、飛び地の水田など、特徴的な水田を選んで行う。また、調
査は成虫の越冬場所に近い水田から始めるのがよい。
- 調査箇所:調査は、対象水田の任意の場所で行えばよい。ただし、風通しやイネの生育
の良否、山林・河畔林・幹線道路などに接しているか否か等には注意する必要がある。 ま
た、調査は畔際から2〜3m(5〜10列または約20株)入ってから始めるのがよい。
- 調査株数:ランダムに選んだ株を対象に、専用の調査シートを使って逐次抽出調査を行
い、1箇所につき5〜10株でおおよその防除要否を判定する(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- 本種の適切な防除のための簡易モニタリング法として、生産現場で活用する。
- 卵塊数ピーク時期の予測法は、発生予察情報の精度向上に活用する。
[その他]
研究課題名:水稲病害虫の要防除水準の設定と簡易モニタリング法の開発
予算区分:道費
研究期間:平成9年度(平成8〜9年)
研究担当者:八谷和彦・中尾弘志・橋本庸三
発表論文等:なし
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