気象・土壌情報を活用した水稲の窒素施肥対応
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[要約]
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水田土壌の窒素肥沃度を風乾土40℃7日間培養窒素量で評価することができ、これをもとに平年の施肥
窒素量を「施肥標準量」から加減する施肥対応ができる。さらに、圃場の乾燥にともなう乾土効果を培養窒素
量と水熱係数で推定することにより、年次別の乾土効果に対応した減肥が可能である。
上川農業試験場土壌肥料科・(財)日本気象協会北海道本部
[連絡先]0166-85-2200
[部会名]生産環境
[専門] 肥料
[対象] 稲類
[分類] 指導
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[背景・ねらい]
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低蛋白米の生産には施肥窒素量の適正化が重要である。そこで、水田の窒素土壌診断に
基づく施肥対応および気象情報を活用した当年の乾土効果予測による減肥指針を策定する。
[成果の内容・特徴]
- 道内水田における風乾土40℃7日間培養窒素量は、25、50、75パーセンタイル値
(低、中、高水準)でそれぞれ7.8、12.0、16.1mgN/100gであり、生土の20℃および3
0℃28日間培養によるアンモニア化成量と相関がある。
- 水稲生長予測モデル(平成6年指導参考)の感度分析から、風乾土培養窒素量(I)
で±4mgN/100gに相当する土壌窒素肥沃度の違いは、最大収量を得るための最適施肥窒
素量(O)において±1.5kgN/10aの差を生じ、両者の比(O/I)は0.375である。
- 2の結果から、風乾土培養窒素量の分析値を「施肥標準」(北海道、平成7年)の
地帯区分および土壌区分別に集計した培養窒素量の中央値と比較することにより、平年
の施肥量を施肥標準量から加減する窒素施肥対応が地域毎に策定できる(図1)。
- 成熟期の水稲窒素保有量は、前年秋9/1〜10/31および当年春4/11〜5/10の水熱係数
と正の相関(r=0.52)があり、乾土効果の年次変動を反映したものと考えられる
(図2)。
- 圃場の乾燥にともなう当年の乾土効果を風乾土培養窒素量と水熱係数をもとに推定
することにより、これに対応した窒素の減肥ができる(表1)。
- 以上のことから、地域別の土壌窒素肥沃度および年次別の乾土効果に対応した施肥
窒素量を現場で算出することが可能となる(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 水熱係数は、HARIS上の「メッシュ気象情報システム」を利用して算出でき
る。
- 窒素施肥対応および乾土効果による減肥指針は土壌診断を実施して利用する。
[その他]
研究課題名:水稲に対する最適施肥窒素量の全道メッシュ予測システムの開発
気象情報を用いた水稲生育予測システムの開発
予算区分 :道費、共同研究
研究期間 :平成9年度(平成6年〜9年、平成6年〜8年)
研究担当者:三浦 周,中村祐二,松岡直基,宮下孝治,大島 巌,稲津 脩,宮森康雄
発表論文等:裸水田水温モデルの圃場への適用,日本農業気象学会北海道支部1997年大
会講要集、1997
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