牧草ミネラル組成改善のためのカリ低減型施肥法


[要約]
牧草のミネラル組成を改善するために、チモシー・シロクローバ混播草地にお いて(1番草)マメ科率を維持できるカリの必要最低量を策定し、土壌診断に基づく施 肥量算出式を提案する。ただし、乾物収量は現行のカリ施肥法に比べやや低下する危険性がある。
北海道立根釧農業試験場・研究部・土壌肥料科
[連絡先]01537-2-2004
[部会名]生産環境
[専門]   肥料
[対象]   牧草類
[分類]   指導

[背景・ねらい]
チモシー・シロクローバ混播草地の牧草体カリ含有率は乳牛の求める水準に比べ明らかに 高い。この状況を改善するために、どこまでカリ施肥量を低減できるかについて検討し、施 肥量の決定方法を提案する。

[成果の内容・特徴]

  1. 牧草の年間乾物収量はカリ供給量(カリ施肥量と早春の土壌表層0〜5cm中交換性カリ量 との合計)の増加に伴い高まる傾向にあり、カリ施肥量14〜22kg/10a(カリ供給量20〜 25kg/10a)で平均的には目標収量である900kg/10aの水準にほぼ達するが、収量水準の年次間 の差は大きい(表1)。このことから、カリ施肥量を18kg/10a(カリ供給量で20〜25kg/10a )程度まで低減する場合、乾物収量を900kg/10a以上に安定して維持することは困難といえ る。
  2. 根釧地方の火山性土地帯のチモシー・シロクローバ混播採草地においてマメ科率を維持 し得るカリ供給量の下限値は20〜25kg/10aである(図1)。また、カリ施肥量18kg区の1番 草マメ科率は22kg区と同等であることと、18kg区における土壌表層(0〜5cm)中交換性カリ 量は3〜4kg/10aであることから、マメ科率の低下をもたらさないカリ供給量の下限を 22kg/10aと設定する。
  3. 牧草のミネラル組成は、カリ供給量の低減により乳牛飼養上望ましい方向に改善され る。すなわち、牧草のミネラル含有率は過剰傾向にあるカリで低下し、逆に不足がちなマグ ネシウムおよびカルシウムでは高まる(図2)
  4. マメ科率維持のためのカリ供給量の下限値を22kg/10aと策定し、このカリ供給量を満た す牧草ミネラル組成重視型のカリ低減型施肥量決定法として   カリ施肥量(kgK2O/10a)   =22−1/2×仮比重×早春土壌(0〜5cm)中交換性カリ含量(mgK2O/100g乾土)   を提案する。これによる試算例を表2に示す。

[成果の活用面・留意点]

  1. この施肥法による収量は、現行のカリ施肥法に比べやや低下する。
  2. 適応地域は北海道東部の火山性土地帯の採草地とする。

[その他]
研究課題名:大規模草地酪農における環境保全型物質循環 -カリの循環-
予算区分 :指定試験
研究期間 :平成7年〜9年度
研究担当者:甲田裕幸・宝至戸雅之・三枝俊哉
研究論文等:三枝俊哉・能代昌雄、北海道の火山性土に立地した草地に対する低投入
                 持続型カリウム施肥の可能性、土肥誌、第67巻3号、p.265-272(1996)
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