暗渠管内の堆泥土の性状と組成


[要約]
排水機能を低下させる暗渠管内の堆泥土は赤褐色を呈し、黒褐色の埋戻し土よりも含水比と炭素含量が高く、また、容積重が小さく、主に非晶質な鉄化合物よりなる。堆泥土中には鉄酸化細菌が存在し、堆泥生成にこの菌の関与が推定される。
北海道開発局開発土木研究所・土壌保全研究室
[連絡先]011-841-1111
[部会名]生産環境
[専門]   農地整備
[対象]   
[分類]   研究

[背景・ねらい]
排水不良な圃場ではその改善に暗渠排水が施工される。しかし、施工圃場でも排水不良を呈することがある。暗渠排水における機能不良の主原因は暗渠排水埋戻し土の透水不良と暗渠管の堆泥による閉塞である。そこで、暗渠管内の堆泥土の性状・組成を調べ、生成原因を究明し、今後の堆泥対策に資する。

[成果の内容・特徴]

  1. 圃場での新鮮な堆泥土は赤褐色(マンセルカラー:5YR4/8)で鉄化合物独特の色を呈し、埋戻し土の黒褐色(10YR3/2)と異なったが、前者の炭素含量は後者よりも高かった(表1)
  2. 堆泥土の湿潤密度と乾燥密度は埋戻し土よりも小さく、含水比はその反対であった。乾燥密度が低く高含水比であることは堆泥土のゲル状態を反映していた(表1)
  3. 元素分析の結果、埋戻し土では珪素、アルミニウム、鉄の順であり、地殻の一般組成と近似したが、堆泥土では鉄含量が最も高く、次いで、珪素、アルミニウムの順で(図1)、両者の組成は大きく異なった。
  4. 埋戻し土のX線回折図は複数の明瞭なピークを示すが、堆泥土には認められず(図2)、堆泥土の主成分である鉄は非晶質で存在した。
  5. 堆泥土中には、鉄酸化細菌の一種(Gallionella属)の代謝産物と考えられる螺旋状で繊状の物質が認められた(写真1)。したがって、堆泥土の生成は微生物の活性と密接に関係していると考えられる。
  6. 以上から、堆泥土は暗渠管周囲の土壌から還元により溶出した鉄イオンが暗渠管内で鉄酸化細菌により酸化され、管内に沈殿したものと推定される。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本成果は堆泥防止対策の確立のための基礎情報となる。
  2. 調査した堆泥土はグライ低地土の圃場の特に排水不良な部分の暗渠管内で認められたもので、排水改良による堆泥の軽減が示唆される。
  3. 本成果の堆泥土は鉄化合物を主成分とするが、それ以外の堆泥土の存在も報告されている。それらについては、別途、生成要因を解明する必要がある。

[その他]
研究課題名:環境保全型農業のための農地整備に関する研究
予算区分 :土地改良事業
研究期間 :平成8年度(平成5年〜8年)
研究担当者:石渡輝夫・高宮信章・大矢朋子
研究論文等:Properities and components of deposit which occurred inside a
                 drainage tube. Soil Sci. Plant Nutr., 42, 573-586(1998)
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