米のアレルゲン性評価手法と変動実態


[要約]
米のアレルゲン蛋白質の定量法を開発し、変動要因解析をおこなった結果、低アレル ゲン化の方策として、低蛋白栽培と高度精白処理が有効となる可能性が示唆された。また、 実態調査からは、ゆきひかりを食べたときに症状がよい患者が他品種より多く、品種間差が 存在する可能性が示された。
北海道立中央農業試験場・農産化学部・穀物利用科
[連絡先]01238-9-2001
[部会名]流通利用
[専門]   治療
[対象]   稲類
[分類]   研究

[背景・ねらい]
近年北海道内でも米アレルギー患者が増加し社会問題となっていることから、@蛋白質的 要因に立脚したアレルゲン性の評価法を開発すること。A医師との共同による調査から、ア レルゲン性品種間差の実態を統計的に明らかにし、今後の生化学的な解析の基礎資料とする ことを目的とした。

[成果の内容・特徴]

  1. アレルゲン蛋白質を特異的に、精度・再現性高く定量する測定法を開発し、3つの評価 値を提案した(表1)
  2. グロブリン含量(GC)は、全蛋白含量と正の相関が認められることから、低蛋白米栽培技 術はアレルゲン性の低減化に関しても有効となる可能性が示唆された(図1)
  3. 精米歩合とアレルゲン性の関係について検討した結果、70%までの高度精白によりアレ ルゲン性は玄米の5%程度にまで低下したことから、米のアレルゲン蛋白質は米粒表層に 局在することが明らかとなった(図2)
  4. 高度精白米で症状が良かったとする患者の割合は6/6であった(表2)。これは、高度精 白によるアレルゲン蛋白質の低減効果が具体的症状に反映された結果と推察される。
  5. ゆきひかりを食べた場合に症状が良かった患者が、それ以外の品種より明らかに多く、 臨床医による指摘とも一致する。しかし、全く逆の反応を示す患者もいることから、品種 間差には患者との交互作用が存在すると考えられる(表2)
  6. 患者の96%は現在米を食べており、その71%はゆきひかりを選択していることから、ゆ きひかりが患者にとってきわめて要求度の高い品種である実態を示している(表2)
  7. アレルゲン性の変動要因として、蛋白質の多少以外に品種間差に基づく要因の存在が示 唆されたため、今後は非蛋白質的な要因も加えた解析を進める必要性がある。

[成果の活用面・留意点]

  1. この成果は、一般のアレルギー患者に対して何らかの治療方針を提示するものではな く、医師および研究者に対してアレルゲン性変動の実態に関する情報を提供し、研究上の 参考とすることを目的としたものである。
  2. アレルゲン性の変動に関する要因は、患者側の状態にも依存することから、特定品種お よび高度精白米の患者への投与効果は今後臨床試験を重ね検証する必要がある。

[その他]
研究課題名:低アレルゲン米の評価・検定手法の確立
予算区分:国費補助
研究期間:平成9年度(平成8〜12年)
研究担当者:柳原哲司
発表論文等:なし
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