ハスカップの加熱処理後の抗酸化活性の変化
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[要約]
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北方系の新作物としてハスカップの機能性成分の検索および加工試験を行い、ハスカップの加熱処理後の抗酸化活性の変化を明らかにした。
道立食品加工研究センター・加工食品部・農産食品科
[連絡先]011-387-4120
[部会名]流通利用
[専門] 加工利用
[対象] 果樹類
[分類] 研究
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[背景・ねらい]
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ハスカップは不老長寿の妙薬といわれ、老化の原因物質の一つとされる活性酸素を除去する働きのある抗酸化活性成分を含んでいることが知られている。しかし、ハスカップを加工処理する過程で、抗酸化活性成分がどのように活性を維持しているかについての検討例はない。
そのため本研究では、食品加工で最も多用される加熱処理を行った後の抗酸化活性の消長を明らかにすることを目的とした。また、ハスカップ製品はゼリーなどの他、果汁のみを使用する場合もあるので、果肉(果汁含む)と果汁を分けて比較した。
[成果の内容・特徴]
- ハスカップをホモゲナイズした果肉部と、さらに圧搾した果汁部を調整し、ナイロン・ポリプロピレンラミネートフィルム(レトルト用)の袋(縦5cm×横5cm)に入れた試料を60℃、80℃、100℃(沸騰水)の水浴で30分間浸積処理、および120℃、30分間レトルト殺菌の加熱処理をした。比較には、加熱処理しない試料を用いた。各処理試料について抗酸化活性(ロダン鉄法、TBA法)を測定した(図1~4)。
- 果肉では、加熱なしと加熱処理(60℃~100℃)したものでは抗酸化活性に差はないが、果汁では、ロダン鉄法による加熱処理(60℃~100℃)の抗酸化活性はやや弱く、TBA法による加熱処理が僅かに強い活性を示し、温度による差は認められない。
- レトルト殺菌試料は、ロダン鉄法では活性が強いが、TBA法では弱く、レトルト殺菌処理による抗酸化機構は他の試料と異なって、過酸化脂質生成阻害作用よりは、生成した過酸化脂質の分解促進作用が大きいものと推測される。
[成果の活用面・留意点]
- ハスカップを通常加熱(100℃以下)で加工したものは、抗酸化活性が期待出来る。レトルト殺菌した製品については、ハスカップ自体の抗酸化活性とは異なったものとなる。
[その他]
研究課題名:北方系機能性植物の食品素材と新規加工食品の開発
予算区分:産学官共同研究(道単)
研究期間:平成9年度(平成7~9年)
研究担当者:北海道大学農学部(原田隆)、北海道東海大学工学部(西村弘行)、
北海道文教短期大学(荒川義人、吉澤結子)、藤女子短期大学(松坂裕子)、
雪印種苗株式会社(高橋哲也)、株式会社のうきょう興産(住友輝治)、
千歳市農業協同組合(彦坂忠人)、道立食品加工研究センター(田中常雄、
田中彰、山本一史、中野敦博)
発表論文等:なし
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