分散処理型堆肥流通支援システムの機能と経済性


[要約]
分散処理型堆肥流通支援システムは、堆肥の切返しと麦稈及び堆肥の流通とを組み合わせることによって、糞尿の地域内循環を促進するとともに、町・農協の助成のもと、低廉な農家負担で堆肥の切返しを実施している。農協がシステムの事務局機能を担うとともに、オペレータの派遣及び機材は地元の農業土木会社と連携を組み、有利に確保している。
北海道立十勝農業試験場・研究部・経営科
[連絡先]0155-62-2431
[部会名]総合研究(農業経営)
[専門]経営
[対象]
[分類]指導

[背景・ねらい]
畜産経営における糞尿問題及び耕種経営における堆肥投入不足の問題を軽減するため、堆肥流通を促進することが重要な課題となっている。堆肥流通のシステムとしては、堆肥原料を特定の場所に集めて処理する集中処理タイプと、処理用機械を堆肥原料のある場所に移動する分散処理タイプがある。ここでは、分散処理タイプのシステムをとりあげ、その組織機能と利用費用を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. 小麦作付け経営の67%が有畜経営に麦稈を供給しており、面積換算では小麦面積の43%を占める。麦稈を導入している経営の大部分は酪農経営であり、導入戸数は68%に達している。畑専・畑野菜経営1戸当たりの麦稈供給量は70個(平均280kg/個)、酪農経営1戸当たりの麦稈導入量は93個、全体の流通量は約6,100個である(図1)
  2. 酪専経営のうち堆肥を供給しているのは61%程度で、1戸当たり供給量は約265t、堆肥を導入している畑専・畑野菜経営では1戸当たり約269tを導入している。酪農経営と畑専・畑野菜経営の間の堆肥の流通量は約8,300tと推定される(表1)
  3. 切返しの作業料金は時間当たり8,000円であり、一般会社の受託料金と比較すると約1,500円低い料金設定である。時間当たり処理能率を100t程度とみると、1t当たりの切返し料金は80円(町・農協の助成を見込むと農家負担は50円)となる。
  4. 堆肥を利用するための切返し費用及び運搬費用を試算すると、運搬の必要のない酪農経営では1回切返しの場合では86円/t、畑専及び畑野菜経営では運搬料金の負担が加わり5kmで453円、10kmでは820円/tとなる(表2)
  5. このシステムは、低廉な農家負担で、麦稈の流通と切返しによって堆肥の地域内利用に貢献しているとみられる。課題は、運搬料金の低減をはかること、連携している協力会社の本業との競合を軽減する配慮等により良好な関係を維持すること、堆肥流通のメリットを追求するとともに畜産経営と耕種経営の相互理解を含めることである。

[成果の活用面・留意点]
  1. 耕種経営と畜産経営(特に酪農)とが混在する地域で同様のシステムを構築する際に参考となる。

[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分]
課題名:分散処理型堆肥流通支援システムの機能と経済性(指導参考)

[その他]
研究課題名:堆肥流通に向けた固形状糞尿の処理・利用技術の経営経済的評価
予算区分 :道費(糞プロ)
研究期間 :平成9〜10年度

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