乳牛糞尿の固液分離特性


[要約]
乳牛糞尿を固液分離する場合には、水道水あるいはばっ気処理液で希釈する方が、固液分離液で希釈するより効果的である。後者では希釈による分離改善効果はほとんど期待できないが、前者では、分離後の固形分水分が低下するとともに、希釈に用いた水量の2倍以上の水が回収される。
北海道立根釧農業試験場・研究部・酪農施設科
[連絡先]01537-2-2004
[部会名]総合研究(農業物理)畜産・草地(畜産)
[専門]農業施設
[対象]乳用牛
[分類]指導

[背景・ねらい]
牛舎から搬出される糞尿の取り扱い易くするために固液分離機が導入利用されているが、糞尿性状によって処理量が大きく変わるなど、利用にあたって不明な点が多い。そこで、水分や粘度等による糞尿の分離特性を明らかにするとともに、既存の固液分離機の分離方式別に、処理能力、分離後の固・液分の水分等を検討して、効率的な糞尿の分離法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
  1. スラリーの粘度は糞尿の乾物割合によって指数的に変化し(図1)、スラリーを水道水で希釈して搾汁した方が、分離後の固形物水分が低く、分離液の回収率も高い(図2)。また、水道水あるいは曝気液で希釈した場合、分離後の固形物水分は分離液で希釈したものよりも低く推移する(図3)。[分離液中の水]と[希釈に用いた水]の比は、水道水希釈では[希釈に用いた水]の2〜4.5倍の水が回収され、曝気液でもこれに準ずる量の水が分離液口から回収される。しかし、固液分離液による希釈では1〜2倍の範囲で、分離改善効果はほとんど期待できない(図4)
  2. これらのことから、固液分離する場合の糞尿は、水道水や曝気処理液で、水分91%〜92%あるいは粘度2000mPa・s程度に希釈するとよい。
  3. 市販機種の方式別分離特性は、スクリュープレス方式の処理能力は7〜11t/hで、分離後の固形物水分は70〜78%である。ローラプレス方式の処理能力は10〜12t/hで、分離後の固形物水分は75〜81%である。圧縮方式の処理能力は約6t/hで、分離後の固形物水分は約79%である。バーンクリーナ用分離機の処理能力は約2t/hで、分離後の固形物水分は約85%である(表1)
  4. 聞き取り調査では、導入後、2〜5年間で、分離用スクリーンを2〜5回交換している。原料を分離液、曝気液で希釈している例が多く、固液分離前の糞尿の原料水分は87.5%〜92.8%である。破損原因の主なものとして、牛舎の新築時に導入した事例で、工事でのコンクリート片等が糞尿中に混入したことが多い(表2)

[成果の活用面・留意点]
  1. 分離のために洗浄水等で希釈する場合には、分離液の貯留槽容量は十分な大きさとする。
  2. 固液分離機を牛舎工事等と同時に導入するときは、コンクリート片などの異物除去に留意する。

[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分]
課題名:乳牛ふん尿の固液分離特性(指導参考)

[その他]
研究課題名:固液分離機の開発および低コスト貯留施設の開発
予算区分 :道費
研究期間 :平成6〜平成10年

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