黄橙肉色ばれいしょ新系統「島系575号」の食品化学成分の特徴


[要約]
カロチノイド高含有ばれいしょ新系統「島系575号」の塊茎の食品化学的性質を調べた。カロチノイド組成はゼアキサンチンに富み、クエン酸と蛋白質の含量が高く、また活性酸素(*OH)消去能と褐変抑制効果が高い。
北海道農業試験場・地域基盤研究部・品質生理研究室
[連絡先]011-857-9301
[部会名]基盤研究
[専門]生理
[対象]いも類
[分類]研究

[背景・ねらい]
ばれいしょは緑黄色野菜ではないが、南米の2倍体栽培種の中には肉色が黄橙色でカロチノイドを含むものがある。その流れをくむ「島系575号」は休眠が浅く、小粒で低収量という欠点はあるものの、食品の機能性などの特徴に期待されている新系統である。そこで、本課題ではカロチノイド含量・種類・組成び調理・加工適性、活性酸素消去能などの食品化学的性質について解明する。

[成果の内容・特徴]
  1. 塊茎中に含まれるカロチノイド組成はβカロチンが1%以下で、約40%がゼアキサンチン(zeaxanthin)である(図1)。カロチノイド含量は市販「キタアカリ」品種の約7倍(zeaxanthin換算、530〜741μg/100gFW)である。
  2. 本色素の活性酸素消去能は化学発光法(図2)で検出され、また同量のβカロチンよりもリノ−ル酸メチルの過酸化物生成を抑制する能力が高く、活性酸素消去能に優れる。
  3. 「島系575号」は蛋白質含量が「男爵薯」よりも多く、その水可溶性蛋白質に活性酸素種の*OH(ヒドロキシルラジカル)消去能が高い(図3)。特に皮層部で高く、また同量の牛血清アルブミンよりもその蛋白質含量あたり消去能が高い。
  4. 「島系575号」は切断後の褐変が「男爵薯」より抑制される。これは塊茎中心の髄部で顕著で、ポリフェノ−ル酸化酵素活性(デ−タ略)と基質のチロシン含量が共に低い。またクエン酸は「男爵いも」よりも多く、還元糖グルコ−スは少ない(表1)。
  5. 低温(2〜3℃)貯蔵中に還元糖が増加せず、シュクロ−スが増加する性質がある。この抽出色素の紫外線耐性は弱く、ブタノ−ル中の耐熱性は比較的高い。

[成果の活用面・留意点]
  1. ばれいしょの食品としての新しい機能性の知見を消費者に提供することにより、新規需要開拓に寄与する。
  2. 新形質を成分育種に取り込み、利用することにより、多用途に合った品種育成に繋げる。

[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分]
課題名:黄橙肉色ばれいしょ新系統「島系575号」の食品化学成分の特徴(研究参考)

[その他]
研究課題名:ばれいしょ塊茎中のカロチノイドの特性解明
研究期間 :平成6〜9年度
予算区分 :大型別枠「新需要創出」
発表論文等:黄橙肉色ジャガイモ新品種の食品化学的性質,園芸学雑誌66別I,542-543,1997.
ポテト塊茎蛋白質の極微弱発光,日本食品科学工学会,第45回大会講演集,149,1998.
Food chemical properties of a new potato with orange flesh, In Agri-Food Quality II, Ed. by M. Hagg et al, The Royal Society of Chemistry, UK, 1999(in press).

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