ダイズわい化病発病度に関するQTL解析


[要約]
大豆のRAPD分析の結果、ダイズわい化病の発病度に関するQTLが連鎖群Gに存在することが認められた。RFLP解析により連鎖地図を作成し、インターバルマッピングを行ったところ、発病度に関する2つのQTLの存在が明らかとなった。
北海道立中央農業試験場・畑作部・畑作第一科、・生物工学部・遺伝子工学科
[連絡先]01238-9-2001
[部会名]基盤研究
[専門]バイテク
[対象]豆類
[分類]研究

[背景・ねらい]
大豆のわい化病抵抗性は真正抵抗性の遺伝資源が見つかっておらず、現在使われている抵抗性品種は圃場抵抗性で、発病度は連続的に変異する。遺伝子工学的手法により育種の効率化を図るため、ダイズわい化病抵抗性に関するDNAマーカーを開発し、大豆のDNAマーカー選抜法の確立を目指す。

[成果の内容・特徴]
  1. 抵抗性(ツルコガネ)と感受性(トヨムスメ、トヨコマチ)品種間の交雑分離世代(F2)のRAPD分析およびF33系統の抵抗性検定の結果、わい化病の発病度は両親の平均値を中心とする正規分布を示し、量的形質であることが示された。ランダムプライマーを用いたRAPD分析から、発病度に関して有意な3つのRAPDマーカーが探索され、連鎖分析の結果これらは同じ連鎖群に属していた。
  2. 大豆の連鎖地図を作成している千葉大学の協力により、上記のRAPDマーカーは千葉大の連鎖群LG5-1、USDAの連鎖群Gに座乗していることが明らかとなった。そこで、連鎖群Gに関するプローブを用いたF6系統のRFLP解析の結果、全長72.6cmの連鎖地図が作成できた。
  3. 得られた連鎖地図とF6系統の抵抗性検定結果から、発病度に関するインターバルマッピングを行ったところ、RFLPマーカーA073の付近に小さなQTLが1つ、同じくA112の上方にさらに大きなQTLの存在が示唆された。この2つのRFLPマーカーを組合せてF6系統を群別した結果、発病度のピークがやや分離する傾向がみられたが、連鎖群GのA112より上方の解析が進み、より効果の大きなマーカーが得られれば、発病度がより明確に分離する可能性がある。

[成果の活用面・留意点]
  1. DNAマーカーを用いると量的形質(QTL)の解析が可能となる。マーカー解析(RFLP、RAPD)に必要なプロトコルを提示したので他の作物、形質に適用できる。
  2. 供試材料は組換え自殖系統(RILS)として養成中であり、わい化病の他に伸育型や線虫抵抗性等の解析に利用できる。
  3. 得られた成果を、わい化病抵抗性の選抜に適用するには、連鎖群Gの未解明領域の解析が必要である。

[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分]
課題名:DNAマーカーを用いた大豆の耐病性遺伝子の解析(研究参考)

[具体的データ]
図1図2図3、表1

[その他]
研究課題名:DNAマーカーによるダイズの耐病性選抜技術の開発
予算区分 :国費受託(イネ・ゲノム研究)
研究期間 :平成10年度(平成6〜10年度)
発表論文等:紙谷元一・木口忠彦・高宮泰宏・白井和栄,大豆のダイズわい化病抵抗性に関するRAPDマーカーの探索,育雑46(別2),74,1996.
紙谷元一・木口忠彦・萩原誠司・白井和栄,ダイズのわい化病抵抗性に関するDNAマーカー選抜I.播種前種子の遺伝子型検定,育雑47(別2),120,1997.

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