水稲湛水直播栽培・落水出芽法における播種機の性能と湛水直播栽培の導入条件


[要約]
供試した5機種の直播機は、播種深度精度向上など機種ごとに改良を要する点はあるものの、いずれも実用化可能である。5機種のうちでは乗用型施肥条播機(密条)の評価が最も高い。湛水直播栽培の導入により、家族労働のみでの規模拡大が可能となり、農業所得が大きく向上する。
北海道立中央農業試験場・稲作部・栽培第一科、
           ・農業機械部・機械科、
           ・経営部・経営科
北海道立上川農業試験場・研究部・水稲栽培科
[連絡先]0126-26-1518
     01238-9-2001
     0166-85-2200
[部会名]作物
[専門]栽培、機械、経営
[対象]稲類
[分類]指導

[背景・ねらい]
落水出芽法を前提とした各種直播播種機の性能を評価する。また、湛水直播栽培の導入に伴う省力効果とコスト低減効果を明らかにするとともに、モデル分析によって湛水直播栽培の導入場面の検討を行う。

[成果の内容・特徴]
  1. 供試した5機種は、いずれも実用レベルの播種精度を示し、苗立ち本数、生育収量からみて北海道の湛水直播栽培において利用可能である(表1)。また、5機種のうちでは、播種条間を北海道向けに20cmの密条とした乗用型施肥条播機の評価がもっとも高い。
  2. いずれの播種機も出芽深度はやや浅めの場合が多く、適正な出芽深度分布が得られるようにさらに播種機の改良が必要である。
  3. 湛水直播栽培の省力効果は40%程度と高いが、移植栽培に比べて収量が低下する事例が多く、60kg当たりの生産費ではコスト高となる場合が多い。
  4. 家族労働力数3人、転作率30%という前提でモデルを構築して分析した結果では、移植栽培のみで水稲を作付した場合の経営可能最大規模は15.4haであるのに対し、湛水直播栽培の導入により20.2haにまで拡大でき、農業所得も114万円向上する(表2)。また、湛水直播栽培の導入により野菜複合経営での規模拡大が可能となる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 湛水直播栽培暫定基準(平成10年1月改訂)を前提とし、湛水直播栽培を導入する際の参考とする。
  2. 湛水直播栽培の導入場面の検討に用いたモデル分析では、雇用労働力の導入や米価および気象の変動を考慮していない。

[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分]
課題名:水稲湛水直播栽培における落水出芽法(追補)播種機の性能と湛水直播栽培の導入条件(指導参考)

[その他]
研究課題名:低コスト稲作総合技術開発
予算区分 :道費
研究期間 :平成10年度(平成5〜10年)
発表論文等:西村直樹(1995):稲作新開発技術の経営的性格-北海道における水稲湛水直播栽培の現状と問題点,北海道農業経済研究,4(2),5〜15

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