穂ばらみ期耐冷性に及ぼす稲対栄養条件の影響と不稔軽減対策


[要約]
穂ばらみ期稲体栄養と不稔の関係から茎炭水化物の重要性を示した。各種資材の不稔軽減効果を検討した結果、ケイ酸資材は、ケイ酸/窒素比・茎炭水化物含有率・葯長を増加させ、アミノ酸資材は、プロリン比率の向上を、植物調整剤は葯長を伸長させそれぞれ不稔歩合を軽減させる。
北海道立上川農業試験場・研究部・水稲栽培科、
土壌肥料科北海道立中央農業試験場・稲作部・栽培第一科 [連絡先]0166-85-22000126-26-1518 [部会名]作物 [専門]栽培 [対象]稲類 [分類]指導

[背景・ねらい]
水稲の冷害には、障害型と遅延型および併行型があり、とくに、穂ばらみ期障害型の不稔発生は、最も被害が大きい。本試験は穂ばらみ期耐冷性に及ぼす稲体栄養条件の影響を解析し、不稔軽減対策技術の高度化と米の安定生産に寄与しようとする。

[成果の内容・特徴]
  1. 葯長の測定を迅速・簡便に行うために、真空ポンプ吸引式の葯採取器と画像解析装置を用いて測定するシステムを開発した(図1)。
  2. 不稔発生に及ぼす葉身窒素含有率と茎の炭水化物含有率の影響を解析した結果、不稔歩合に及ぼす影響は窒素含有率よりも炭水化物含有率で大きかった(図2)。
  3. 茎の炭水化物含有率は止葉期の茎葉のケイ酸/窒素比と密接な関係にあった。ケイ酸資材の施用により止葉期における茎葉のケイ酸/窒素比、茎の炭水化物含有率および葯長が増加し、不稔歩合が低下した(図3)。
  4. プロリンを含んだアミノ酸資材を幼穂形成期1週間後〜2週間後に葉面散布することにより、葉身中のプロリン比率が向上し、不稔歩合は低下した。
  5. 冷水田において、穂ばらみ期に各種資材を葉面散布した結果、アブシジン酸ほか数種の植物調節剤の処理により、葯長が増加し不稔歩合が低下した(図4)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 本試験の成果はきらら397を用いたものである。
  2. 画像解析法による葯長の測定は、不稔歩合の早期予測に活用する。
  3. 本システムはMacintoshに対応する。
  4. 不稔軽減を目的としたケイ酸資材の追肥は、幼穂形成期1週間後に20・/10aを目安に行う。このとき、従来の深水管理を合わせて行う。
  5. アミノ酸資材および植物調節剤は未登録である。

[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分] 課題名:穂ばらみ期耐冷性に及ぼす稲体栄養条件の影響と不稔軽減対策(指導参考)

[その他]
研究課題名:耐冷性向上生産技術早期開発事業
予算区分 :道費
研究期間 :平成10年度(平成6〜10年)
発表論文等:谷川晃一,水稲の耐冷性に対する植物調節剤の効果-画像解析による葯長の測定-,日本育種学会・日本作物学会北海道談話会報,39,1998
後藤英次・五十嵐俊成・宮森康雄,穂ばらみ期のケイ酸栄養条件が水稲の不稔発生に及ぼす影響,日本土壌肥料学会北海道支部秋期大会講演要旨集,45,1998
田中英彦・吉原洋,幼穂形成期以降の遮光処理によるC/N比の低下が水稲の不稔発生に及ぼす影響,日本育種学会・日本作物学会北海道談話会報,39,1998日本育種学会・日本作物学会北海道談話会報,39,1998

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