野菜栽培における紙マルチの利用技術


[要約]
レタスでは、黒紙マルチは5月中旬から8月上旬まで、標準紙マルチは6月上旬から8月上旬まで利用できる。はくさいでは、標準紙マルチおよび黒紙マルチが6月上旬から8月上旬まで利用できる。だいこんでは、黒紙マルチのみ7月から8月上旬播種の作期で利用できる。
北海道立上川農業試験場・研究部・園芸科北海道立十勝農業試験場・研究部・園芸科北陽製紙株式会社
[連絡先]0166-85-22000155-62-2431
[部会名]作物
[専門]栽培
[対象]葉茎菜類、根菜類
[分類]指導

[背景・ねらい]
紙マルチは使用後そのままほ場に鋤込めるため、省力的で廃棄物が出ない。そこで、実用性の高い紙マルチを産地へ普及させるために、製品の開発および改良を(株)北陽製紙が、その製品の野菜に対する適応性の検討および農業特性の評価を道立農試が担当し、紙マルチを野菜栽培に利用するにあたっての栽培指針を策定する。

[成果の内容・特徴]
  1. 地温・土壌水分の推移:マルチ下の地温は、レタス、はくさい栽培では、グリーンマルチ>黒紙マルチ≧白黒ダブルマルチ>標準紙マルチの順に高く推移する。だいこん栽培では、透明マルチ>シルバーマルチ>黒紙マルチ=無マルチ>標準紙マルチの順に高く推移する(図1)。紙マルチは、通気性があるためポリマルチに比べて土壌水分が低めに経過し、ポリマルチと無マルチのちょうど中間の変動パターンを示す(図2)。
  2. レタス:紙マルチは、5月中旬移植作期では、グリーンマルチより生育は劣るが、規格内率は高い。6月上・中旬の移植作期では、白黒ダブルマルチに比べ生育はやや劣るが、規格内率はほぼ同等となる。7月上・中旬移植作期では、紙マルチの収穫期、規格内収量とも白黒ダブルマルチとほぼ同程度となる(表1)。
  3. はくさい:6月上旬から8月上旬の移植作期における紙マルチの収穫期、規格内収量は白黒ダブルマルチとほぼ同等である。ただし、6月上旬から6月下旬の移植作期では、紙マルチの生育が、白黒ダブルマルチに比べてやや劣る場合がある(図3)。
  4. だいこん:栽培期間中の低地温が根形不良の大きな原因となるため、黒紙マルチのみ、7月上旬から8月上旬播種の作期においてシルバーマルチの代替として使用できる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. レタスの夏秋どり、はくさい・だいこんの秋どり栽培に適用する。
  2. 紙マルチのすき込み直後に播種する場合は、ロータリ耕を丁寧に実施する。
  3. 穴あき紙マルチでは、開孔部の土壌が乾燥したり、降雨により緻密になることがあるので、レタス・はくさいの移植直前にマルチングすることが望ましい。
  4. 紙マルチにはアブラムシの回避効果がほとんどないので、モザイク病の発生地帯では、品種の選択やアブラムシの発生状況に注意する。

[平成10年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分]
課題名:紙マルチの特性と野菜(レタス、はくさい、だいこん)栽培における利用技術(指導参考)

[その他]
研究課題名:機能性紙マルチ利用による野菜栽培省力化技術の確立
予算区分 :共同(民間)
研究期間 :平成10年度(平成8〜10年)

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