0.1%ヨウ素乳頭消毒剤を用いたプレディッピングの牛乳房炎予防効果


[要約]
0.1%ヨウ素乳頭消毒剤を用いたプレディッピングを行った牛群(14頭)の乳房炎発生率は、対照牛群(15頭)のそれよりも低かった(P=0.057)。個体乳中のヨウ素濃度は両群間に有意な差は認められなかった。
北海道立新得畜産試験場・生産技術部・衛生科、家畜部酪農科
[連絡先]01566-4-5321
[部会名]畜産・草地(畜産)
[専門]診断予防
[対象]家畜類
[分類]指導

[背景・ねらい]
プレディッピングは、乳頭表面に付着している細菌がミルカーによる搾乳時の乳汁逆流現象により、乳頭槽内へ侵入して発生する乳房炎の予防に効果があると考えられている。しかし、わが国では従来プレディッピング用として認可を受けた消毒剤がなかったため、その乳房炎予防効果に関する成績は少ない。一方、わが国の乳房炎発生状況は、黄色ブドウ球菌などの伝染性細菌によるものがやや減少傾向にあるのに対し、大腸菌などの環境性細菌によるものが増加する傾向にある。そのような状況の中、0.1%ヨウ素乳頭消毒剤「NZ78」がわが国で初めてプレディッピングにも適用できる消毒剤として認可された。  本試験ではNZ78によるプレディッピングの乳房炎予防効果、乳頭表面細菌に対する殺菌効果ならびに乳汁中ヨウ素濃度に及ぼす影響について検討を行った。

[成果の内容・特徴]
  1. 試験期間(6か月間)中に主要な乳房炎起因細菌に感染した牛は、プレディッピング群では14頭中0頭、対照群では15頭中4頭で、乳房炎発生率はプレディッピング群の方が対照群よりも低かった(P=0.057)(表1)。起因細菌の内訳は、大腸菌1頭、減乳性連鎖球菌1頭および乳房連鎖球菌2頭で、いずれも環境性細菌であった(表2)。
  2. 搾乳作業前およびミルカー離脱直後の乳頭表面細菌数はプレディッピング群と対照群の間に有意差は認められなかった(各群8頭、16分房)。ミルカー装着直前の同細菌数は、プレディッピング群の方が対照群よりも有意(P<0.05)に少なかった(図1)。
  3. 個体乳中のヨウ素濃度はプレディッピング群と対照群の間に有意差は認められなかった。(図2)
  4. 以上の成績から大腸菌、無乳性連鎖球菌以外の連鎖球菌などの環境性細菌による乳房炎が多発している牛群においては、NZ78を用いたプレディッピングはこれらの乳房炎の発生率を低下させるための一方策として有用であることが示唆された。

[成果の活用面・留意点]
  1. プレディッピングを行う際、乳汁中のヨウ素濃度を一定レベル以下に保持するため、薬液浸漬後の感作時間(15〜30秒間)を厳守し、ミルカー装着前の乳頭の清拭、特に乳頭口周囲の清拭は確実に行う必要がある。
  2. プレディッピングの十分な殺菌効果を得るために、搾乳牛の乳頭が土や糞便などで汚染されないように留意する必要がある。
  3. ディッパーはノンリターン式のものを用い、プレディッピング用とポストディッピング用としてそれぞれ専用のものを用意することが望ましい。

[平成10年度北海道農業試験会議における課題名及び区分]
課題名:0.1%ヨウ素乳頭消毒剤を用いたプレディッピングの牛乳房炎予防効果(指導参考)

[その他]
研究課題名:ヨウ素乳頭消毒剤(NZ78)を用いたプレディッピングの牛乳房炎予防効果
予算区分 :受託
研究期間 :平成10年度

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