排卵同期化による黒毛和種の定時人工授精技術
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[要約]
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分娩後4〜10週の黒毛和種雌牛に、GnRHを注射した後7日目にPGF2αを投与し、その30〜48時間後に2回目のGnRHを投与して排卵同期化をはかり、処置終了後18〜22時間の間に授精するという定時人工授精技術によって、発情看視をすることなく従来の発情発見後の適期授精に匹敵する受胎率が得られ、かつ、空胎日数の短縮も可能であることが示された。
北海道立新得畜産試験場・生産技術部・衛生科
[連絡先]01566-4-5321
[部会名]部会名 畜産・草地(畜産)
[専門]繁殖
[対象]家畜類
[分類]指導
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[背景・ねらい]
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近年、肉用牛の繁殖経営においては、飼養頭数の増加等に伴い発情看視のための時間が十分にとれないことなどから、空胎日数が100日を超えている状況にある。したがって、発情看視の省力化と空胎日数のより一層の短縮が求められる。
そこで本試験では、分娩後の哺乳している黒毛和種雌牛にホルモン剤を投与して排卵を同期化し、発情看視をすることなく適期に授精できる定時人工授精技術について検討した。
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[成果の内容・特徴]
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分娩後4〜10週の黒毛和種雌牛60頭を4群(各群15頭)に分けて試験を開始した。処置1、2および3群の牛には図1に示したホルモン処置スケジュールで排卵を同期化して定時人工授精を行った。一方、対照群の牛は無処置とし、試験開始時から毎日朝夕2回の発情看視を行い、スタンディング発情を発見した場合には適期に人工授精した。人工授精後5週目に、すべての雌牛について超音波断層法により妊娠診断を実施した。結果は次のとおりであった。
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処置1、2および3群の雌牛における分娩から初回授精までの日数は、対照群のそれに比べ、有意に短かった(p<0.01、表1)。
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1回目のGnRH注射後7日目にPGF2αを投与し、さらにその30または48時間後に2回目のGnRHを投与して定時人工授精した処置1群および2群の初回授精受胎率は対照群に比べ高い傾向があった(表1)。
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受胎した牛について各群の空胎日数を比較すると、処置1、2および3群の空胎日数は、対照群に比べると短かい傾向があった(p=0.05-.09、表1)。また、産子は全て単子であった。
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処置1、2および3群の牛について、分娩からホルモン処置を開始するまでの経過日数と受胎率との関係を調べたところ、分娩後4週から10週の間では大きな差はなかった(表2)。
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[成果の活用面・留意点]
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本技術を用いた排卵同期化処置後の定時人工授精により、その農場の牛群において適期に人工授精した場合の受胎率に匹敵する成績が得られる。また、この技術は発情看視の省力化を望む農場においてとくに有用である。
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良好な受胎率を得るためには、適切な栄養管理が求められる。
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[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分]
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課題名:排卵同期化による黒毛和種の定時人工授精技術(指導参考)
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[具体的データ]
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図1
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[その他]
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研究課題名:黒毛和種雌牛の排卵同期化による定時人工授精システムの開発
予算区分 :道単
研究期間 :平成10年度(平成9〜10年)
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