未粉砕試料を用いた効率的な近赤外線反射率測定法によるオーチャードグラスの成分分析


[要約]
オーチャードグラスについて、未粉砕試料を用いた効率的な近赤外線反射率測定法による成分の推定が可能なことを明らかにした。3回の反復測定により、粉砕試料を用いた従来の分析法と同等以上の推定精度が得られる。
北海道農業試験場・草地部・イネ科牧草育種研究室
[連絡先]011-857-9273
[部会名]畜産・草地(草地)
[専門]育種
[対象]牧草類
[分類]研究

[背景・ねらい]
近赤外線反射率測定法(NIRS)は飼料作物の品質を迅速に推定する手段として有用性が高いが、現在の定法では試料の前処理として乾燥と粉砕の工程が必要で、必ずしもタイムリーな分析とはなっていない。本研究では、このうち粉砕の工程を省略し、圃場から刈り取った乾燥試料を直接セルに充填して測定する方法の実用性を検討する。

[成果の内容・特徴]
  1. オーチャードグラスの29品種・系統の2番草から4番草の試料87点について、表1に示した3種の前処理法で調製し、処理法別にCP(粗蛋白質)、NDF(中性デタージェント繊維)および1%セルラーゼによる24時間後の分解率(以下、分解率)の各形質に対応する検量線をNIRSystems社製6500型分析計を用いて開発した。
  2. 未粉砕法については、ニレコ社の保有する長方形型セル(内寸:長さ202mm×幅47mm×深さ35mm)に、乾燥した茎葉の試料15g±2g程度をそのまま折り曲げて敷き詰める方法を採用した。未粉砕法ではセルへの詰め直しによる反復測定が必要で、測定を3回程度繰り返すことにより、各形質の推定精度が向上した(表2)。3回の測定に要する時間の合計は1試料あたり約2分30秒で、この間に全形質のデータを取得できる。
  3. 開発した未粉砕法(3回測定)の検量線の精度は、微粉砕法および粗粉砕法(1回測定)に比較して、CPではやや低いものの、NDFと分解率では同等であった(表1)。
  4. 未知サンプルを用いて検定した各形質の未粉砕法(3回測定)の推定精度は、微粉砕法および粗粉砕法(1回測定)に比較して、いずれも同等またはそれ以上と認められた(表2図1)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 未粉砕法を利用することにより、前処理としての粉砕に伴う労力をまったくかけなくても、精度を低下させることなく、極めて容易にオーチャードグラスの品質を推定できる。ただし、測定は3回繰り返すことが条件となり、約50gの乾物試料が必要である。
  2. サイレージなどの調製方法が異なる試料や他の草種および出穂茎を含む試料については今後更に検討が必要である。

[その他]
研究課題名:オーチャードグラスの高品質・多収・環境耐性品種の育成
予算区分 :経常
研究期間 :平成10年度(平成6年〜20年)
発表論文等:近赤外線反射測定法(NIRS)によるオーチャードグラス未粉砕試料の化学成分および分解率の簡易測定法,日本草地学会誌,44巻別号,266-267,1998

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