アカクローバとジグザグクローバの稔性を持つ種間雑種の作出


[要約]
アカクローバとジグザグクローバの種間雑種を戻し交雑により稔性回復させ、実用育種につながる完熟種子を得ることができる。ジグザグクローバを交雑親和性で選抜することにより、雑種胚形成率及び雑種の花粉稔性を大きく向上させることができる。
北海道農業試験場・草地部・マメ科牧草育種研究室
[連絡先]011-857-9272
[部会名]畜産・草地(草地)
[専門]育種
[対象]牧草類
[分類]研究

[背景・ねらい]
アカクローバの永続性の改良は、各国で取り組まれる最重要の育種目標である。しかし、アカクローバ(Trifolium Pratense L.)は短年生であるため、永続性の改良には種としての限界がある。そこで、永続性の近縁野生種ジグザグクローバ(T.medium)との種間交雑により永続性関連形質を導入する試みを行ってきた。雑種の稔性が極めて低いため、実用育種の素材として利用するためには、まず、自然交雑で完熟種子が得られ、容易に組み換え可能で、遺伝的変異を含む雑種集団を作出できることを確認する必要があった。

[成果の内容・特徴]
  1. アカクローバ(RC2n=4X=28花粉親)にジグザグクローバ(ZC2n=10X=80種子親)を交配し、胚培養で得た雑種をコルヒチン処理し、染色体を倍加した1個体(2n≧98)について、RCによる戻し交雑を行った。戻し交雑第1代(BC1)の花粉稔性は2.0%、種子稔性は0%、BC4の花粉稔性は66.9%、種子稔性は21.5%だった(図1)。
  2. 温室内におけるBC3とBC4の相互交配から完熟種子を得ることができた(表1)。
  3. 戻し交雑世代はRCとZCの形態特性を有していた。しかし、地下茎の発生はBC1の半数で認められたが、BC2以降は認められなかった(表2)。
  4. RCとZCの交配後、魚雷型胚までの生育を指標として、交雑親和性についてZCの選抜を行うことによって雑種胚形成率が著しく向上した(表3)。
  5. 交雑親和性によるZCの選抜によって、雑種の花粉稔性は著しく向上したが、戻し交雑胚の形成率は変化がなかった(図2)。

[成果の活用面・留意点]
  1. 完熟種子が得られたことで、実用育種への足がかりができた。
  2. 得られた完熟種子はすべて1個体の雑種に由来しているので、育種の基礎集団として用いるためには遺伝的変異の拡大が必要である。

[その他]
研究課題名:胚培養技術を利用したアカクローバ永続性育種素材の作出
予算区分 :経常・作物開発強化
研究期間 :平成10年度(平成6〜10年)
論文発表:アカクローバとジグザグクローバの雑種および戻し交雑世代の稔性と染色体数,草地学会誌,43(別),94-95,(1997).
アカクローバ近縁野生種ジグザグクローバにおけるアカクローバとの交雑親和性による選抜と種間雑種の諸特性,育種学会誌48(別2),283,(1998).
Fertility of Interspecific Hybrids and Cross Compatibility Between Trifolium medium and T. pratense. XV Trifolium Conference. (1998).

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