牧草サイレージの調製条件とタンパク質分画との関連
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[要約]
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水分含量55%以下の牧草サイレージでは、水分含量が低いほど溶解性タンパク質割合は低い。出穂期調製サイレージに比べ、結実期および2番草サイレージの溶解性タンパク質割合は少なく非分解性タンパク質割合は多い。ギ酸添加により溶解性タンパク質は減少する。
北海道立根釧農業試験場・研究部・酪農第一科
[連絡先]01537-2-2004
[部会名]畜産・草地(畜産)
[専門]動物栄養
[対象]乳用牛
[分類]指導
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[背景・ねらい]
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近年、タンパク質の溶解性および非分解性を考慮した飼料給与が試みられている。そこで、チモシー主幹牧草(シロクローバ乾物割合15%)を原料草として用い、牧草サイレ−ジの水分含量、刈取時期、調製形態およびギ酸の添加等が、タンパク質分画(結合性タンパク質(CPb)、NDF中CP含量(NDFIP)、溶解性タンパク質(CPs)割合、非分解性タンパク質(CPu)割合)に及ぼす影響を明らかにする。
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[成果の内容・特徴]
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水分含量55%以下のサイレージでは、水分含量の低下とともに、溶解性タンパク質(CPs)割合は減少し、結合性タンパク質(CPb)、NDF中CP含量(NDFIP)割合、非分解性タンパク質(CPu)割合は高まる傾向がある(表1)。水分含量が55%以上を越える場合では、水分含量にともなう変化は少ない(図1)。
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出穂期に調製したサイレージの溶解性タンパク質(CPs)および非分解性タンパク質(CPu)割合は61%および24%である。これに対し結実期に収穫調製したサイレージは、溶解性タンパク質(CPs)割合は54%、非分解性タンパク質(CPu)割合は31%と、原料草のステージの進行によりタンパク質分画は変化する(表2)。
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2番草は1番草(出穂期)に比べて、溶解性タンパク質(CPs)割合は低く、非分解性タンパク質(CPu)割合は高い。この傾向は、ロールサイレージで大きい(表2)。
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ギ酸添加により、NDFIPが増加し溶解性タンパク質(CPs)は低下する(表3)。
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中水分ロールサイレージでは、越冬前利用に比べて越冬後は、溶解性タンパク質(CPs)は低く、非分解性タンパク質(CPu)は高い(表4)。
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サイレージの調製条件等がタンパク質分画に及ぼす影響を表5に示す。
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[成果の活用面・留意点]
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タンパク質分画を考慮した飼料設計を行う場合に有効である。
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非分解性蛋白質(CPu)は、酵素法で求めた値である。
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本試験で示したタンパク質分画値は、サイレージを凍結乾燥して分析した値であり、通風乾燥処理の場合に比べて溶解性タンパク質の値は5〜10%程度高い。
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[平成10年度北海道試験会議成績会議における課題名及び区分]
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課題名:牧草サイレ−ジの蛋白質分解性および発酵品質に関する試験(指導参考)
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[その他]
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研究課題名:牧草サイレージの蛋白質分解性および発酵品質に関する試験
予算区分 :道費
研究期間 :平成10年度(平成9年〜10年)
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