水稲害虫の天敵であるクモ類と寄生性天敵の発生実態
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[要約]
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水田及び畦畔に生息するクモ類は9科が確認され、個体数が多いのはサラグモ科、アシナガグモ科、フクログモ科、コモリグモ科である。また、水稲害虫の寄生性天敵は寄生蜂(7種)と寄生菌(6種)が見られる。
北海道立上川農業試験場・研究部・病虫科北海道立中央農業試験場・稲作部・栽培第二科
[連絡先]0166-85-22000126-26-1518
[部会名]生産環境
[専門]作物虫害
[対象]稲類
[分類]研究
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[背景・ねらい]
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水稲害虫に対しては、発生対応型防除による減農薬栽培技術などが開発されているが、より一層の減農薬を実現するためには、天敵などを利用した生物防除法の開発と導入が不可欠である。そこで、生物防除法確立のための基礎資料とするために、水稲害虫の天敵類の発生実態を解明する。
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[成果の内容・特徴]
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クモ類の発生実態
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水田及び畦畔でのすくい取り調査では9科のクモ類が確認され、そのうち個体数の多かったものは、造網性種でサラグモ科、アシナガグモ科、徘徊性種ではフクログモ科、コモリグモ科である(表1)。
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畦畔では春期から秋期まで多数のクモ類が認められ、水田周辺の生態系におけるクモ類の発生源となっている。
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ユスリカ類は、本田初期から水田へ侵入し、6月後半頃から発生量も多くなり、7月の害虫類の発生が乏しい時には、クモ類などの広食性捕食者の餌生物になっている。また、8月に入ると水田においてヒメトビウンカの個体数が増加し、これらがクモ類の餌生物として重要になる(図1)。
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寄生性天敵のリスト(表2)
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イネドロオイムシ卵塊からタマゴバチの一種、まゆからドロムシヤドリアメバチ、ドロムシミドリコバチ、硬化病菌であるMetarhizium anisopliae、Beauveria bassiana、Paecilomyces farinosusが確認された。
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ヒメトビウンカの卵には高率でアカホソハネコバチが寄生しており、幼虫からクロハラカマバチ、疫病菌のErynia sp.が確認された。
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イネミズゾウムシ成虫からは硬化病菌のM.anisopliae、B.bassianaが確認された。
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アカヒゲホソミドリメクラガメ成虫からは硬化病菌のB.bassianaが確認された。
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フタオビコヤガ幼虫からキアシナガサムライコマユバチ、硬化病菌のNomuraea rileyi、疫病菌のZoophthora sp.、蛹からアオムシヒラタヒメバチが確認された。
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[成果の活用面・留意点]
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天敵類を利用した生物防除法を確立する上での基礎資料とする。
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[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分]
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課題名:水稲害虫の天敵類の発生実態と天敵類に及ぼす農薬の影響(研究参考)
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[その他]
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研究課題名:水稲害虫の天敵類の発生実態と天敵類に及ぼす農薬の影響
予算区分 :道費
研究期間 :平成10年度(平成8〜10年)
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