畑作物に対する牛糞尿スラリーの施用効果と利用法
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[要約]
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スラリー中窒素の畑作物に対する肥効率は全窒素では35%程度、アンモニア態窒素では70%程度で化学肥料を代替しうる。秋まき小麦収穫跡地への施用はエン麦などの緑肥の作付けが必須で9月中旬までである。当年作付け予定のない裸地への施用は硝酸態窒素の流亡を招くの避ける。
北海道立十勝農業試験場・研究部・土壌肥料科
[連絡先]0155-62-2431
[部会名]生産環境
[専門]肥料
[対象]畑作物
[分類]指導
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[背景・ねらい]
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十勝管内では草地面積に比して乳牛を多頭数飼育し、自己の経営内での糞尿スラリーが余剰となっている経営が多くなりつつあるため、畑作でのスラリーの有効活用を促進する必要がある。このため畑作物に対するスラリーの施用に伴う減肥量と適切な施用時期を設定する。さらに利用が見込まれる秋まき小麦跡地でのスラリーの利用法を提案する。
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[成果の内容・特徴]
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畑作物へのスラリー施用効果と肥効率
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畑作物に対するスラリー中の春施用、播種後表面施用の肥効は高いが秋施用はやや肥効が劣る(表1)。
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サイレージ用トウモロコシに対して春施用の場合、スラリー中全窒素(T-N)の吸収利用率(肥効率)は25〜43%、含有するアンモニア態窒素(NH3-N)の肥効率は42〜77%で、スラリーの未熟、腐熟による肥効率の差はない(表2)。
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秋まき小麦跡地でのスラリーの利用法
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9月中旬施用でもエン麦が播種されていればスラリー中のアンモニア態Nの吸収は行われ、下層土壌溶液の硝酸態窒素濃度は低いレベルで推移する。
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9月中旬の裸地へのスラリー散布により、越冬前の下層土壌溶液の硝酸態窒素濃度は10ppm(飲料水基)準以上となる。また地温の低下した10月下旬の裸地への散布でも下層土壌溶液の硝酸態窒素濃度は10ppmは越えないものの明らかに上昇する(表3)。したがって秋の裸地へのスラリー散布はしてはならない。
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以上の結果をまとめ、スラリーの畑作物および小麦跡エン麦に対する施用(利用)指針を表表4、表5に窒素、カリの肥効率、施用時期などについて示した。
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[成果の活用面・留意点]
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スラリー中の養分濃度は変動が大きいので施用する場合は簡易分析法などで濃度を確認し表4により化学肥料の減肥を行う。
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スラリーの施用量は必要とするカリ施肥量以内、1回あたり施用限界量は表面流去が発生しない4〜5t/10a以内とする。
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[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分]
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課題名:畑作物に対する牛糞尿スラリーの施用効果と利用法(指導参考)
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[その他]
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研究課題名:家畜糞尿利用技術 I.環境容量の設定 2-2.畑作物に対する糞尿還元量の設定
予算区分 :道単
研究期間 :平成10年度(平成6〜10年)
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