オ−チャ−ドグラス採草地に対するかん水指針


[要約]
オ−チャ−ドグラスの単播採草地に対するかん水指針を提示する。かん水重点期は再生初期10〜20日間、かん水開始点はpF3.7〜4.1、かん水量は土壌の種類で異なり、褐色森林土と灰色台地土ではそれぞれ25〜60、10〜40mmである。
北海道立天北農業試験場・研究部・土壌肥料科
[連絡先]01634-2-2111
[部会名]生産環境
[専門]農地整備
[対象]牧草類
[分類]指導

[背景・ねらい]
北海道北部は5〜8月の降水量が300mm程度の小雨地帯である上、草地の50%以上が保水性の小さな重粘土に立地している。そのため、牧草は2〜4年に1度の頻度で干ばつ害を受ける。そこで、干ばつ害を回避・軽減するかん水技術を確立するため、北海道の重要草種であるオ−チャ−ドグラス(OG)の生育におよぼす水分供給の影響を検討し、OG採草地に対するかん水重点期、開始点、および土壌の種類別のかん水量を示す。

[成果の内容・特徴]
  1. かん水重点期:水分の供給を制限すると、OGの生育にマイナスの影響が強くあらわれる期間(かん水重点期)は、1番草が再生初期20日間(萌芽〜節間伸長期前、図1)、2番草が再生初期20日間(従属再生長期〜伸長期)、3番草が再生初期10日間(従属再生長期〜転換期)である(表1)。
  2. かん水開始点:各番草のかん水重点期において、OGの生育が低下し始める土壌水分レベル(かん水開始点、土壌深15cm)は、2番草がpF4.1(図2)、3番草がpF3.7である(表1)。
  3. 天北地方の主要土壌の保水性:各番草のかん水開始点からかん水後の目標水分レベルとしたpF1.5までの孔隙量は、土壌の種類により大きく異なり、1番草で0.043〜0.116cm3cm-3、2番草で0.142〜0.235cm3cm-3、3番草で0.091〜0.197cm3cm-3の範囲である。
  4. 土壌の種類別のかん水量:かん水開始点からpF1.5までの孔隙量とOGの土壌水分消費型(既往のデ−タから推定)より、土壌の種類別にかん水量を算出した。天北地方の主要土壌に対するかん水量は、褐色森林土では1番草が25mm2番草が60mm、3番草が45mmで、灰色台地土ではそれぞれ10、40、25mmである(表1)。
  5. 天北地方におけるかん水指針:以上の結果から、天北地方のOG単播採草地に対するかん水指針を提示する(図3)。

[成果の活用面・留意点]
  1. かん水開始点は、別途用意する水分判定用標準土壌サンプルを利用して、触感により判別する。判別深度は15cmとする。
  2. かん水方法は、スラリースプレッダーもしくはスプリンクラーを基本とし、滞水しない程度のかん水強度でおこなう。かん水量が30mmを越える場合は2〜3回に分割する。
  3. 天北地方および干ばつ常襲地帯に適用する。天北地方の場合は、降雨特性を考慮すると、特に2番草に対するかん水が重要である。

[平成10年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分]
課題名:オ−チャ−ドグラス採草地に対するかん水指針(指導参考)

[その他]
研究課題名:牧草に対する好適土壌水分環境の解明
予算区分 :受託
研究期間 :平成10年度(平成6〜10年)
発表論文等:オーチャードグラス2番草に対する水分供給重点期,土肥要旨集,43,304,1997.

戻る