気象要因に基づく低アミロ小麦の発生危険度の予測


[要約]
登熟期の湿潤状態の長さと時期が低アミロ化に及ぼす影響を指数化(低アミロ化影響指数)し、気象条件に応じて補正した指数の累積値により低アミロ小麦の発生危険度を予測する方法を開発した。
北海道立中央農業試験場・農産化学部・穀物利用科
[連絡先]01238-9-2001
[部会名]流通利用
[専門]加工利用
[対象]麦類
[分類]指導

[背景・ねらい]
低アミロ小麦の発生については、成熟期以降の気象要因との関連が比較的明らかにされているが、成熟期以前の気象要因との関連については明らかとなっていない。そこで、登熟期の気象要因が成熟期および成熟期以降のアミログラム最高粘度に及ぼす影響を明らかにし、低アミロ小麦の発生予測法を開発する。

[成果の内容・特徴]
  1. 登熟期の湿潤状態が低アミロ化に及ぼす影響は期間が長いほど、時期が遅くなるほど大きく、成熟期にα−アミラーゼが活性化していない場合でも低アミロ耐性は低下し、その後の短期間の湿潤状態によりα−アミラーゼが活性化する。
  2. 登熟期の湿潤状態により、α−アミラーゼ活性は以下のように推移する(図1)。
    1. 成熟期15〜10日前に湿潤状態となる場合は、成熟期のα−アミラーゼ活性は低下するが、成熟期以降の短期間の湿潤状態により活性化する。
    2. 成熟期10〜5日前に湿潤状態となる場合には、成熟期のα−アミラーゼ活性は比較的高く、成熟期以降のわずかな湿潤状態により活性化する。
    3. 成熟期5日前〜成熟期に湿潤状態となると、成熟期のα−アミラーゼ活性はすでに上昇傾向にあり、成熟期以降の湿潤状態でさらに活性が上昇する。
  3. 穂発芽処理試験により湿潤状態が低アミロ化に及ぼす影響を数値化した(低アミロ化影響指数)。
    低アミロ化影響指数=A×成熟期基準経過日数+B(図3)
    (チホクコムギ:A=0.011B=0.201ホクシン:A=0.006B=0.160)
  4. 低アミロ化影響指数を気象条件(降水量、最高気温、日照時間)に応じて補正し、補正後の指数を成熟期15日前から累積し、累積値により低アミロ小麦の発生危険度を予測する方法を開発した(図2表1)。
  5. この予測結果の全道のアミロ粘度の調査結果への適合性は約80%であり、低アミロ化影響指数累積値0.50未満の小麦はほぼ健全で、0.50以上1.00未満は低アミロの危険性があり、1.00以上はほぼ低アミロであると予測できる。

[成果の活用面・留意点]
  1. 低アミロ小麦発生危険度予測法は収穫物の品質を推定するものではなく、収穫は従来の収穫開始時期の判定基準に基づき速やかに行う。
  2. 本予測法はチホクコムギ、ホクシンを対象とする。
  3. 低アミロ小麦発生危険時期の予測は適期収穫指導の際の参考となる。
  4. 本予測法に用いる成熟期は圃場観察によって確認する。

[平成10年度北海道農業試験会議における課題名および区分]
課題名:気象要因の解析に基づく低アミロ小麦の発生危険度の予測(指導参考)

[具体的データ]
図4

[その他]
研究課題名:道産小麦の品質向上試験(パートIII)4.低アミロ小麦回避技術の確立1)低アミロ小麦発生予測システムの開発と簡易検定法の実用化
予算区分 :受託
研究期間 :平成7〜9年度

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