排水路沿いに緩衝林帯のある草地での流出形態


[要約]
草地では雨水の浸透能が小さいため傾斜方向に表面流が発生しやすい。しかし、排水路沿いに緩衝林帯がある場合は、草地からの表面流は林帯地表から浸透し、林帯表層土壌で一旦貯留されたのち、数日間かかって徐々に排水路へ流出する。
北海道開発局開発土木研究所・農業開発部・農業土木研究室,土壌保全研究室
[連絡先]011-841-1764
[部会名]総合研究(農業物理)
[専門]環境保全
[対象]農業工学
[分類]研究
[背景・ねらい]
家畜ふん尿に由来する水質汚濁の対策には、水系への汚濁負荷の流出防止と水系内での浄化がある。前者の例として排水路沿いの緩衝林帯が有効であるといわれているが、その機能が未解明なため、林帯幅などの計画手法が定まっていない。そのため、林帯の水質浄化機能解明の基礎資料として、根釧地域(別海町)の林帯を有する草地斜面で雨水の流出経路を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. 調査斜面の地表面における降雨の浸透能をベーシックインテークレートIb(地表面に貫入させた円筒内に湛水し、その水面の1時間当たりの低下量で表す)で比較すると、草地ではおよそ数mm/hと小さいのに対し、林帯では数100mm/hと大きい(図1)。そのため、草地では表面流が生じやすい。
  2. 調査斜面では、約0.4mの層厚を持つ細粒火山灰層の表土の下部に約0.7〜0.8mの層厚の軽石れき層があり、その下部には難透水層が存在する。草地斜面を流下した表面流は、緩衝林帯地表面で速やかに浸透したのち、この難透水層より浅い範囲を排水路の方向に移動する(図2)。
  3. 草地と林帯での地下水位をみると、浸透能が小さい草地(上)と草地(中)では、降雨時の地下水位の変化が小さい。また、林帯(下)付近は、常に低湿で、地下水位は地表面に近い位置にあり変化が小さい。草地(下)から林帯(中)にかけての3地点の地下水位は、降雨と表面流出水の浸透によって上昇する。林帯(中)の降雨後の水位低下はやさでみると、林帯表土内に浸透した雨水は、数日間かかって徐々に排水路へ流出する(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 調査斜面の近傍地域では、表土に上部摩周テフラ層が堆積している。また林帯は、ハンノキ、シラカンバ、ホザキシモツケ、ササ等の繁茂する落葉広葉樹林である。本成果で示す流出経路は、同様の条件を有する草地流域で適用できる。
[その他]
研究課題名:肥培かんがい技術の高度化に関する研究
予算区分 :経常
研究期間 :平成11年度(平成11〜15年)
研究担当者:秀島好昭、中村和正,石田哲也、中山博敬
発表論文等:林帯による水質浄化機能調査-降雨流出に対する緩衝機能について-、
      第49回農業土木学会北海道支部研究発表会講演要旨集、pp.74-77、2000.

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