コムギ縞萎縮ウイルスの検出技術
- [要約]
- コムギ縞萎縮ウイルスの外被タンパク質遺伝子を単離し、遺伝子組換え技術によって、大腸菌でウイルス抗原を大量に発現させ、抗体を作成した。作成した抗体によるエライザ法で、コムギからウイルスを検出できる。
北海道立中央農業試験場・農産工学部・遺伝子工学科
北海道大学大学院・農学研究科
[連絡先]01238-9-2001
[部会名]基盤研究
[専門]バイテク
[対象]麦類
[分類]指導
- [背景・ねらい]
- コムギ縞萎縮ウイルス(WYMV)は,コムギの根に寄生する土壌菌Polymyxa graminisによって媒介される土壌伝染性のウイルスである。現在の主要品種「ホクシン」は,コムギ縞萎縮病に弱く,「ホクシン」の作付増加に伴い,本ウイルスの分布が拡大している。そこで,道内における発生実態調査および抵抗性系統の早期選抜のために,遺伝子工学的手法を利用して,コムギ縞萎縮ウイルスの実用的な検出技術を確立する。
- [成果の内容・特徴]
- 伊達市「ホクシン」の病葉から,コムギ縞萎縮ウイルスのRNAを抽出し,RT-PCR法によって外被タンパク質(CP)遺伝子を単離した。
- 単離したCP遺伝子を大腸菌に組み込んだところ,コムギ縞萎縮ウイルスの外被タンパク質(CP)を大量に発現させることができた(図2)。大量発現したCPをカラムで精製して,抗血清作成のための抗原を得た。
- 得られた抗原をウサギに免疫し,抗血清(抗体)を作成した。作成した抗体を用いたエライザ法によって,病葉の10,000倍希釈液からもウイルスを検出できる(図3)。
- エライザによるコムギからのウイルス検出部位を検討した結果,最上位展開葉では吸光値が低下し(図4),葉身部位では先端で吸光値が高まった。したがって,エライザ検定は,最上位展開葉の1枚下の葉の先端部を検定用サンプルとする。
- [成果の活用面・留意点]
- エライザ法は,発生実態調査,品種系統の抵抗性検定など,コムギ縞萎縮ウイルスの検出に幅広く活用できる。
- 平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
- 課題名:コムギ縞萎縮ウイルスの検出技術の確立(指導参考)
- [具体的データ]
- 図1
- [その他]
-
研究課題名:小麦縞萎縮病の発生実態解明と緊急防除対策
予算区分 :道単
研究期間 :平成9〜12年
研究担当者:上田一郎・高橋葉子・磯貝雅道・山名利一・堀崎敦史・畑谷達児・竹内 徹
発表論文等:大腸菌で発現した外被タンパク質より作成した抗体によるコムギ縞萎縮ウイルスの検出,日植病報,第64巻.第6号.583.1998.(講要)
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