いんげん未熟子葉からの不定芽形成と植物体再分化
- [要約]
- いんげんの未熟子葉を適当な不定芽形成培地に置床することで不定芽が形成され、さらに多芽体へと発達する。多芽体を培養瓶のキャップとして通気性の良いメンブレン付アルミ箔を使用して培養することで再分化植物体が効率的に得られる。再分化植物体を温室へ鉢上げすることで、採種個体率は低いが、後代種子を得ることができる。
北海道立中央農業試験場・農産工学部・細胞育種科
[連絡先]01238-9-2001
[部会名]基盤研究
[専門]バイテク
[対象]豆類
[分類]研究
- [背景・ねらい]
- いんげんの未熟子葉からの形態形成、さらには不定芽形成のための培養条件を検討し、効率的で安定的な不定芽形成条件を明らかにする。また、未熟子葉培養によって形成される不定芽からの効率的な植物体再分化条件、さらに再分化植物体からの後代種子の採種条件について検討する。
- [成果の内容・特徴]
- いんげん品種「丹頂金時」等の未熟子葉からの植物体再分化系を確立した。再分化植物体は、未熟子葉からの不定芽形成、不定芽からの多芽体形成を経て、さらに多芽体を数回継代した後に得られる(図1、2、3)。
- 効率的な不定芽形成条件は、未熟莢を採取後6日間以上低温保存してから未熟子葉を摘出し、4〜6mmの大きさを用い、MSを基本とする0.05mg/l NOA、3mg/l BAP、0.5〜2mg/l ABA、30g/l ショ糖、2g/l ゲルライトの不定芽形成培地の使用である。
- 未熟子葉からの不定芽形成には品種・系統間差異が存在し、「丹頂金時」、「福虎豆」、「昭和金時」等の形成率は高く、「十育B22号」、「前川金時」、「紅金時」等では低いか、全く形成されない。不定芽からの多芽体形成率は、「福虎豆」で他品種に比べて劣る傾向である。
- 不定芽から直接植物体が再分化する事はなく、旺盛に生育する多芽体を形成する。多芽体からの鉢上げ可能な健全植物体の再分化には、培養瓶のキャップとしてメンブレン付アルミ箔の使用が効果的である(表1)
- 再分化植物体を温室に鉢上げし、後代種子を採種することができる(図4)。しかしながら、鉢上げ後の活着、生育が悪い個体が多く、採種個体率は低い(表2)。
- [成果の活用面・留意点]
- 体細胞育種法によるいんげんの品種改良に利用できる。
- 不定芽形成、多芽体形成および植物体形成には、品種・系統間差異が大きいので、形成率の劣る品種・系統については、さらなる培養条件の検討が必要である。
- 平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
- 課題名:菜豆未熟子葉からの植物体再分化系の確立(研究参考)
- [その他]
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研究課題名:細胞・組織培養技術の開発
予算区分 :道費
研究期間 :平成12年度(平成2〜11年)
研究担当者:玉掛秀人
発表論文等:菜豆未熟子葉からの植物体再分化,育種・作物学会北海道談話会報 第32号,P42-43,1991;
インゲンマメ未熟子葉からの不定芽形成に及ぼす植物ホルモンおよびゲル化剤の影響,育種学雑誌 44(別冊2),P72,1994;
インゲンマメ未熟子葉からの不定芽形成の 安定化と効率化,育種学雑誌 46(別冊1),P234,1996
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