チモシー主体粗飼料のα−トコフェロールおよびβ−カロテン濃度


[要約]
チモシー主体粗飼料の番草別の刈り取り時期と水分調整時間から、調製原料草のα−トコフェロールおよびβ−カロテン濃度の目安値を予測できる。1番草乾草など一部の粗飼料の乾物中α−トコフェロールおよびβ−カロテン濃度は低く、これら粗飼料のみでは乳用牛飼料の推奨値を充足できない。
北海道立根釧農業試験場・研究部・乳質生理科
[連絡先]01537-2-2004
[部会名]畜産・草地(畜産)
[専門]動物栄養
[対象]家畜類
[分類]指導
[背景・ねらい]
α−トコフェロール(ビタミンE)とβ−カロテンは乳房炎や繁殖障害の減少を目的とする飼料添加剤として注目され、同時にその要求量(給与推奨値)も増大する傾向にある。そこで、チモシー主体粗飼料の乾物中濃度に対する調製条件の影響と現地での乾物中濃度の実態を明らかにし、粗飼料品質向上と飼料給与設計のための基礎資料とする。
[成果の内容・特徴]
  1. 乾物中のα−トコフェロールおよびβ−カロテン濃度は番草、刈り取り時期、水分調整時間の影響を受け、番草別の刈り取り時期と水分調整時間から誤差は大きいものの調製原料草の乾物中濃度の目安値を予測できる(図1)。
  2. 乾物中のα−トコフェロールとβ−カロテン濃度には高い相関があり、乾物中濃度は生草では放牧草>2番草生草>1番草生草の順で、調製粗飼料では高・中水分サイレージ(乾物率34%以下)>低水分サイレージ(乾物率35%以上)>乾草の順である。
  3. 道東・道北地域で利用されている1番草乾草と一部の2番草乾草・低水分サイレージの濃度は低く、これらの粗飼料のみでは全給与飼料中の含量に対する日本飼養標準乳牛(1999年版)のビタミンA推奨値(β−カロテン換算で8〜15mg/kg)とNRC乳用牛飼養標準第6版(1989年改訂版)のビタミンE推奨値(α−トコフェロール換算で14mg/kg)を充足できない(表1)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 粗飼料のβ−カロテン・α−トコフェロール含量の向上、及び、乳牛の飼料給与設計に利用できる。
  2. 目安値に対する刈り取り時期の影響は平成10〜11年の根室地区のデータに基づいている。1番草は生育期の進行による変化量が大きいので、他の地域では生育期による補正が必要である。

平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:チモシー主体粗飼料の乾物中α−トコフェロールおよびβ−カロテン含量(指導参考)
[その他]
研究課題名:放牧による高ビタミン牛乳生産技術の開発
予算区分 :国費受託
研究期間 :平成12年度(平成10〜12年)
研究担当者:高橋雅信・芹川 慎・糟谷広高・本郷泰久・西村和行
発表論文等:なし

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