脂肪交雑および皮下脂肪厚が優れた黒毛和種種雄牛「深晴波号」


[要約]
全兄弟検定を組み込んだ検定システムを用いて黒毛和種種雄牛「深晴波」を作出した。気高系の「賢深」を父に、藤良系の「ほうせい」を母とする血統で、発育性は全国平均と同水準だが、脂肪交雑と皮下脂肪厚が特に優れている他、出荷体重、枝肉重量も良好であり、肉質の良い大きな枝肉を生産できる質量兼備のバランスのとれた能力を持つ。
北海道立畜産試験場・家畜生産部育種科
[連絡先]01566-4-5321
[部会名]畜産・草地(畜産)
[専門]育種
[対象]家畜類
[分類]普及
[背景・ねらい]
北海道における黒毛和種の飼養頭数は着実に増加を続けており、わが国の黒毛和種生産基地となることが期待されている。しかし、本道の黒毛和種の産肉能力は府県と比較して低水準にあるとされていることから、改良推進のための道産優良種雄牛の作出が急務となっている。本事業では、一般的な種雄牛検定法に受精卵移植技術を利用した全兄弟検定を組み込んだシステムを用い、肉質・肉量ともに優れた産肉能力を持つ「深晴波号」を作出した。
[成果の内容・特徴]
  1. 受精卵移植技術を利用した全兄弟検定を組み込んだ検定システムを用いて黒毛和種優良種雄牛「深晴波」(ふかはるなみ)を作出した。
  2. 血統: 「深晴波」は父系系統表記では気高系の「賢深」を父に、藤良系の「ほうせい」を母とする交配から作出された(図1)。
  3. 発育性: 「深晴波」の日増体量は直接検定で1.11kg/day、全兄弟検定で0.92kg/day、間接検定で0.94kg/dayであり、全国平均と同程度の水準である(表1表2表3)。
  4. 産肉性: 「深晴波」の枝肉重量は全兄弟検定で350kg、間接検定で367kgと全国平均より大きい。また、皮下脂肪厚は全兄弟検定で1.4cm、間接検定で1.3cmと非常に薄く、精肉歩留の良い枝肉生産が期待できる。ロース芯面積、ばらの厚さは全国平均と同程度の水準である。脂肪交雑は全兄弟検定で2.8、間接検定で2.9と全国平均を大きく上回る水準であり、肉質改良への貢献が期待される(表2表3)。
  5. 遺伝病: 「深晴波」は「バンド3欠損症」、「第13因子欠損症」、「クローディン16欠損症」の遺伝子を保有していない。
[成果の活用面・留意点]
「深晴波」は主に道内繁殖雌牛の更新に用いる。父の系統が晴美系を除くほとんどの繁殖雌牛に対して交配可能であるが、特に枝肉重量の小さい田尻系・茂金系の繁殖雌牛への交配に適する。

平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:黒毛和種種雄牛「深晴波号」(普及奨励)
[その他]
研究課題名:北海道優良基幹種雄牛育成事業
予算区分 :国補事業
研究期間 :平成12年度(平成4〜12年)
研究担当者:酒井稔史・藤川 朗・荘司 勇・山本裕介・南橋 昭・宮崎 元・川崎 勉

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