秋まき小麦赤さび病の被害許容水準と効果的薬剤防除
- [要約]
- 小麦赤さび病は特に上位2葉での発病が収量に及ぼす影響が大きく、被害許容水準は乳熟期の止葉の被害面積率が5%、開花始の止葉の病葉率が25%である。本病に対する抵抗性が「弱」の品種では、止葉抽出〜穂孕期に一回目の薬剤散布を行い、開花始に赤かび病との同時防除を行う。
北海道病害虫防除所・予察課
[連絡先]01238-9-2080
[部会名]生産環境
[専門]作物病害
[対象]麦類
[分類]指導
- [背景・ねらい]
- 秋まき小麦赤さび病に対して抵抗性が「弱」の品種が主要品種となったことや、近年高温年が続き発生が増えていることから、本病に対する警戒が強くなっている。そこで、主要品種の変遷や、気象の影響によって本病の発生状況が変化した際にも、効果的な薬剤防除を可能にする資を得ることを目的とした。
- [成果の内容・特徴]
- 抵抗性「弱」の「ホクシン」においては、出穂前の薬剤散布がないと減収したため、赤かび病との同時防除のみで本病の防除に対応することはできない(表1)。
- 「ホクシン」は、「ホロシリコムギ」に比べ、赤さび病の病斑周囲に形成される黄化部分およびそれによって助長される枯凋が大きく、本病によって枯れやすい品種である。
- 特に上位2葉の被害面積率と収量との間に高い相関が認められ、上位2葉の発病が収量に及ぼす影響が大きい。
- 被害許容水準は、開花始の止葉の病葉率が25%(図1)、乳熟期の止葉の被害面積率が5%(図2)である。
- 抵抗性「弱」の品種の発病を被害許容水準以下にするには、止葉抽出〜穂孕期に1回、開花始に1回(赤かび病との同時防除)の薬剤散布が必要である。また、抵抗性が「中」以上の品種では、開花始に赤かび病との同時防除のみで対応できる。以上の薬剤防除には表2に示す薬剤を使用する。
- 秋季の薬剤散布は、翌春の本病の発病の抑制に対して効果がない。
- [成果の活用面・留意点]
- 耐性菌の発生を招く可能性があるので、2回散布の場合には、同一系統の薬剤を連用しない。
- 年次によって小麦の生育速度が異なり、5月下旬以降の高温は赤さび病が多発しやすく、小麦の生育も早まるので、止葉抽出期を見逃さないように注意する。
- 平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
- 課題名:秋まき小麦赤さび病の被害許容水準と効果的薬剤防除(指導参考)
- [その他]
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研究課題名:総合的病害虫管理技術実証事業
予算区分 :国費(植物防疫事業費)
研究期間 :平成11年度(平成7〜11年)
研究担当者:池田幸子・西脇由恵・堀田治邦
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