斑点米の原因となるアカヒゲホソミドリカスミカメの飼育法
- [要約]
- 円筒型透明プラスチック製飼育ケージを用い、小麦の芽出し苗を餌として、アカヒゲホソミドリカスミカメの継代飼育が簡易にできる。
北海道農業試験場・生産環境部・虫害研究室
[連絡先]011-857-9280
[部会名]生産環境
[専門]作物虫害
[対象]稲類
[分類]研究
- [背景・ねらい]
- アカヒゲホソミドリカスミカメは斑点米を引き起こすカメムシ類のうち寒冷地での主要種であり、稲への加害機構には未解明の部分が多い。しかし他の多くの斑点米カメムシと異なり、本種は乾燥種子では飼育することができない。このため野外採集により供試個体が十分に得られる時期以外では研究を継続することが難しい。そこで、本種を通年飼育できる技術を確立する。
- [成果の内容・特徴]
- 餌の調整:プラスチックシャーレ(直径9cm、高さ2cm)の身の部分を用い、脱脂綿を敷いて小麦種子を約5g播種する。種子は予めチウラム・ベノミル水和剤で浸漬処理を行い、カビ等による発芽苗の腐敗を防ぐ。播種したシャーレには十分給水し、16時間照明、22℃の定温器で発芽させる。幼虫用には播種4日目(苗長約1cm)以降から苗が5cm程度のものを用い、成虫用(採卵用)には5〜7cm程度の苗を用いる。
- 飼育容器および餌の交換:ネットを貼った窓付きの円筒型ケージ(外径9cm、高さ25cm)を用いる(図1)。餌の交換時には新しい餌にケージを逆さにして差し込み、虫を下に落下させ、その後上部の古い餌を取り除く。餌の交換頻度は虫の密度によるが、5〜6日をめど(加害による苗のいたみがひどくなる前)として早めに行う。飼育は16時間照明、25℃の定温条件。この方法で簡易に継代飼育ができる。
- 採卵:羽化した成虫をケージに収容し、採卵期間は4〜6日とする。採卵期間を短くすることでケージごとに発育ステージの揃った幼虫が得られる。
- さまざまな孵化幼虫密度で飼育した事例から、成虫になるまで約17日、羽化率は37.9〜72.3%であった(表1)。また雌成虫30〜40頭(雌雄合計で55〜80頭)、4〜6日の採卵期間で得られる孵化幼虫数は250〜471頭であった(表2)。
- [成果の活用面・留意点]
- 現在まで2年以上(20世代以上)継代飼育を行っているが、近交弱勢や病気の発生等の悪影響は見られない。
- [その他]
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研究課題名:カメムシによる斑点米発生機構の解明
予算区分 :作物対応研究[次世代稲作]
研究期間 :平成12年度(平成9年〜12年)
研究担当者:伊藤清光
発表論文等:「コムギ芽出し苗を用いたアカヒゲホソミドリカスミカメの継代飼育法」,北日本病虫研報,51:155-157(2000).
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