近赤外分光法による農耕地土壌の簡易迅速分析


[要約]
近赤外分光法による農耕地土壌の全炭素、全窒素の簡易迅速な測定が実用的に可能である。陽イオン交換容量とりん酸吸収係数については推定誤差がやや大きくなるが、傾向値として使用できる。
北海道立上川農業試験場・研究部・栽培環境科
[連絡先]0166-85-2200
[部会名]生産環境
[専門]土壌肥料
[対象]
[分類]指導
[背景・ねらい]
土壌診断の簡易・効率化のために、成分の抽出操作等の煩雑な前処理が不要な近赤外分光法による土壌分析の可能性を検討し、その実用化を図る。
[成果の内容・特徴]
  1. 近赤外分光法での土壌成分の推定精度は、土壌の粉砕程度で大きく影響される。通常の2mmのふるいに通したもの(2mm試料)よりも、自動めのう乳鉢で5分微粉砕した方が再現性、精度ともに高い(表1)。土壌温度や土壌水分による精度の差は小さく、15〜25℃の室温条件、風乾状態での測定でよい。
  2. 分析値と推定値の重相関係数が0.9を越えたのは、分析項目の中で全炭素、全窒素であり、次いで陽イオン交換容量とりん酸吸収係数であった。また、この条件で得られた全窒素、全炭素の推定値と分析値の標準誤差は小さく、実用的に利用可能である。陽イオン交換容量とりん酸吸収係数については推定誤差がやや大きくなるが、傾向値として使用できる(表2)。
  3. 地域別、土壌型別の検量式を作成するとさらに精度は高くなる(表2)。
  4. 全道に適用可能な全炭素、全窒素、陽イオン交換容量、りん酸吸収係数についての検量式の作成を試みた結果を表3に示す。
[成果の活用面・留意点]
  1. 農業振興センタ−、JA、農業改良普及センタ−等が実施している土壌診断場面で活用できる。
  2. 検量式の適用の際には、機種間差を考慮し、標準試料(実測値が既知の試料)により推定値と実測値の関係をチェックして検量式を補正する。
  3. 試料セルは、検量式の補正により通常の粉体試料用セル(10ml容)でも測定可能である。

平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:近赤外分光法による土壌の簡易迅速分析(指導参考)
[その他]
研究課題名:近赤外分光法を活用した土壌簡易迅速分析法の確立
予算区分 :受託
研究期間 :平成10〜11年度
研究担当者:田丸浩幸・稲津 脩・宮森康雄・長谷川進

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