塩分を含むかんがい用水の取水管理
- [要約]
- 塩分を含む水稲かんがい用水の取水管理指標として、活着期から幼穂形成期前までは塩分0.25%、幼穂形成期以降では塩分0.20%を超えた場合に取水停止する。
北海道立中央農業試験場・農業環境部・環境基盤科
[連絡先]01238-9-2001
[部会名]生産環境
[専門]環境保全
[対象]稲類
[分類]指導
- [背景・ねらい]
- 河口付近でかんがい用水(以下用水)を取水している地区では、用水に海水が混入し塩分濃度が高まることがあるため、独自の取水停止塩分濃度を設定している。本試験ではこの事例を基に、塩分を含む用水の取水管理指標を提示する。
- [成果の内容・特徴]
- EC(電気伝導度)と塩分濃度は高い相関関係があり、ECにより塩分濃度を推定できる(図1)。
- 幼穂形成期後に、塩分濃度0.30%以上の用水を6日間以上かんがいしたときに減収を招く場合が多い。幼穂形成期までに、塩分濃度0.30%以上の用水を、5日間のみかんがいした場合は減収しないが、合計10日間かんがいした場合は明らかに減収する(図3)。以上から、取水停止塩分濃度を0.30%未満に設定する。
- 現地事例から次のことがいえる。(1)干ばつ害を回避するためには塩分濃度0.10%以上での短期的な取水はやむを得ない(表1、図2)。(2)塩分濃度0.25%以下の用水による明らかな減収は確認されていない。(3)用水塩分濃度変化は急激におこり、その予測は不可能である。
- 既往の研究成果から、用水の塩分濃度が水稲へ与える影響は栄養生長期間よりも生殖生長期間に大きく、2期間に分けた取水管理指標を策定する。
- 以上のことから、塩分を含む用水の取水管理指標は以下のようになる。
(1)活着後〜幼穂形成期前において塩分濃度0.25%を超えた場合には取水を停止する。
(2)幼穂形成期以降において塩分濃度0.20%を超えた場合には取水を停止する。
(3)上記の取水管理を行った場合でも、塩分濃度0.10%を越える用水は圃場を乾燥させないような入水にとどめ、0.10%以下になった場合は十分なかけ流しを行うと共に、その後の塩分濃度上昇に備え田面水を蓄える水管理をする。また、田面水の希釈、除塩が見込める降雨があったときは0.10%を超える用水の取水を停止する。
- [成果の活用面・留意点]
- 本成績の取水管理指標は、用水の塩分濃度が高くなった場合に取水判定の参考となる。
- 本成績は石狩市北生振地区を調査事例として取り上げ、透水性の良い条件で試験を行った。土壌の透排水性が極めて不良な条件では、取水停止塩分濃度をさらに低くする必要がある。
- 平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分
- 課題名:塩分を含むかんがい用水の取水管理(指導参考)
- [その他]
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研究課題名:「農作物の突発性生理障害診断」、「水稲の生育初期における塩水の影響調査」
予算区分・研究期間:道費・平成2〜4年、受託・平成11、12年
研究担当者:須田達也、土居晃朗、竹内晴信
発表論文 :なし
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