造成後36年間のサロベツ泥炭草地の面的沈下量
- [要約]
- サロベツ泥炭地内の造成草地において、1963年(造成直後)、1974年及び1999年の標高と沈下量の関係を解析した。36年間の沈下量は0.69〜1.47mで、平均1.06m(置土深約10cmは未補正)である。沈下量は1963年標高の高い地点で大きく、1999年標高の高い地点で小さい。
北海道開発局開発土木研究所・農業開発部・土壌保全研究室
[連絡先]011-841-1117
[部会名]生産環境
[専門]農地整備
[対象]農業工学
[分類]研究
- [背景・ねらい]
- 泥炭地の農地化に排水は不可欠であるが、それに伴う地盤沈下は不可避である。しかし、泥炭農地の沈下量を面的に実測した事例は少ない。1960年代以降、大規模な農地開発が行われたサロベツ泥炭地では当時、実験農場(図1)が設けられ造成前後の標高が測定された。そこで、同一地域での標高測定を1999年に実施し、沈下量を明らかにするとともに、原標高と沈下量との関係を明らかにする。
- [成果の内容・特徴]
- 造成直後の1963年の38地点の標高(E1)は6.50m〜7.32mで、東方に向かって標高は高い傾向を示す(図2)。造成11年後の1974年の標高(E2)は5.86m〜7.02mで、造成36年後の1999年の標高(E3)は5.28m〜6.18mである。
- 1999年までの36年間の全沈下量(TS=E1-E3)は0.69〜1.47mで、平均1.06m(置土深は未補正)で北東に向かって沈下量は大きい(図3)。
- E1,E2およびE3にはいずれも正の相関(E1*E2:(r=0.92**),E2*E3:(r=0.61**),E3*E1:(r=0.49**))があり、特に、1963年と1974年の相関は高く、経過時間が短いほど相関は高い。
- 全沈下量に対する後期沈下量(LS=E2-E3)と後期沈下率(後期沈下量の全沈下量に対する割合:RLS=LS/TS)の関係には正の相関があり(TS*LS:(r=0.84**),TS*RLS:(r=0.56**))、全沈下量の大きな地点で後期沈下量や後期沈下率も大きく、長期的沈下を示唆する。
- 各測定年の標高(E1,E2,E3)と前期沈下量(ES=E1-E2)、LS及びTSとの相関係数は表1のようである。全沈下量は1963年標高と正、1999年標高と負の相関があった。すなわち、E3の高い地点は基盤の鉱質土標高が高く、泥炭層厚が薄いため沈下量が小さい事を示唆する。
- [成果の活用面・留意点]
- 泥炭農地の沈下予測及び保全の基礎資料となる。
- [その他]
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研究課題名:高度な農地整備工法の開発に関する研究
予算区分 :経常研究費
研究機関 :平成10〜12年度
研究担当者:石渡輝夫・会沢義徳(稚内開建)・石田哲也
発表論文等:平成12年度日本土壌肥料学会(2000年4月)発表
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