寒地畑作・畜産地帯を流れる河川における窒素負荷の簡易推定式


[要約]
統計資料に基づき、北海道の畑作・畜産地帯を流れる大流域河川の水質の全窒素は、流域の畑・草地面積率および表層地質により推定できる。
北海道農業試験場・生産環境部・土壌特性・微生物研究室
[連絡先]011-857-9241
[部会名]生産環境
[専門]土壌
[対象]
[分類]研究
[背景・ねらい]
河川水質の汚濁負荷の流出特性は、流域の汚濁負荷源や自然環境、気象条件、水系の大小などに影響されるが、流域が広い大河川では影響要因が複雑なため十分な解明がなされていない。そこで、網走・十勝地域の畑作・畜産地帯を対象に、大河川の全窒素濃度と流域からの全窒素流出量を統計資料に基づいて解析し、農地面積や表層地質など自然特性の影響を考慮して、簡便に窒素負荷を推定する式を求める。
[成果の内容・特徴]
  1. 北海道の農地を流れる大河川の窒素負荷の現状は、公表されている流量年表(日流量)、公共用水域の水質測定結果(全窒素濃度)や土地利用のデータ、表層地質図をもとに流域面積や土地利用率との関係から推定できる(図1)。
  2. 網走・十勝地域の畑作・畜産地帯を流れる大河川の年平均全窒素濃度は、統計データ上同一区分となっている普通畑・牧草畑および草地の流域面積率と密接に関係し(図2)、関係式は
     年平均全窒素濃度[mg/L]=5.23×(流域畑・草地面積率)+0.31     (R2=0.62)
    である。
  3. 詳細には、河川の年平均全窒素濃度は、畑・草地面積率が同率であっても流域の表層地質が火砕流堆積物及び段丘の場合には、不透水性基盤の地質に比べ低い傾向を示す(図3)。表層地質ごとの関係式は、下記の通りである。
    不透水性基盤:
     年平均全窒素濃度[mg/L]=5.07×(流域畑・草地面積率)+0.47     (R2=0.36)
    火砕流堆積物・段丘:
     年平均全窒素濃度[mg/L]=5.79×(流域畑・草地面積率)−0.14     (R2=0.95)
  4. 流域の単位面積当たりの年間流出全窒素量も流域の畑・草地面積率と関係があり(図4)、関係式は
     年間全窒素流出量[kgN/ha/year]=68.9×(流域畑・草地面積率)−2.66  (R2=0.97)
    であり、流域の表層地質との関係は見出せない。
[成果の活用面・留意点]
  1. 北海道の土地利用型の畑作及び畜産地帯を流れる大河川に適用される。
  2. 河川への主要な汚濁負荷源が大都市の場合や、流域での営農形態が大きく変化した場合には適用できない。
  3. 河川流域の表層地質が明確な場合は、表層地質ごとの推定式を用いた方が良い。
[その他]
研究課題名:寒地の畑作・畜産地帯の水質に関するMIの策定
予算区分 :貿易と環境
研究期間 :平成12年度(平成8〜12年)
研究担当者:竹中 眞,草場 敬(農業研究センター)
発表論文等:草場 敬,早川嘉彦:北海道酪農地帯における水質保全,畜産の研究,53(8),23-31,(1999)

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