米アレルギー患者への「ゆきひかり」および高度精白米の有効性
- [要約]
- 米アレルギー症状の発症には、異なる免疫機序が混在して関与しており、米RAST値が低い患者群は抗体の関与が弱く、「ゆきひかり」への品種変更による有効率が高い。一方、米RAST値が高い患者群では抗体の関与が強く、抗体結合活性が低減化された高度精白米の方が有効率が高い。
北海道立中央農業試験場・農産工学部・農産品質科
[連絡先]01238-9-2001
[部会名]流通利用
[専門]食品品質
[対象]稲類
[分類]指導
- [背景・ねらい]
- 北海道内複数の臨床医からは、品種による米アレルギー症状発現性の違いが指摘されており、実際の治療に取り入れて多くの臨床実績を重ねている。これを踏まえて、米アレルギー患者に対する品種変更および高度精白米の臨床的な有効性を検証し、その生化学的な解析を目的とする。
- [成果の内容・特徴]
- 米アレルギー患者への「ゆきひかり」および高度精白米の臨床試験(前方調査)
1)他品種から「ゆきひかり」への品種変更による有効率は68.4%で、「ゆきひかり」無効患者の高度精白米への変更の有効率は69.4%である。しかし、少数ながら悪化例も認められることから、治療を目的とした米の変更は、あくまでも医師による治療の一環として実施する必要がある(図1)。
2)米RAST値が陰性の患者群では「ゆきひかり」の有効率が高かった。しかし、米RAST値が高い患者群では、「ゆきひかり」の有効率が低く、高度精白米の試用を優先する方が病悩期間の短縮につながる(図2)。
- 品種間差および精白処理間差の生化学的な検討
1)抗体結合活性に明確な品種間差は認められず、「ゆきひかり」も他の品種と同程度に抗原蛋白質を含んでいることから(図3)、その有効性は体液性免疫からは裏付けられなかった。
2)「ゆきひかり」のパッチテストの反応性は他の2品種より明らかに低いことから、臨床での「ゆきひかり」の有効性は細胞性免疫に基づくことが推察された(図4)。
3)抗体結合活性は米粒表層で極めて高く(図5)、高度精白処理は米粒表層に局在する抗原の除去に有効な技術である。
4)精白歩合が高まるに従い抗体結合活性が低下する傾向が、多くのアレルギー患者に共通して認められる(図6)。
- [成果の活用面・留意点]
- 臨床および生化学的解析データは、医療、農業研究上の参考として活用できるほか、アレルギー患者、生産者、米流通業者にも提供できる。
- 臨床データは、一連の米アレルギー治療の中から抽出されたものであり、治療への適用に当たっては医療機関の指導があることを前提とする。
- 本試験におけるアレルゲン性の品種間比較は、品種の危険性を示すものではなく、米アレルギー発症機序の解析を目的としたものである。
- 平成12年度北海道農業試験会議における課題名および区分
- 課題名:米アレルギーに関する臨床実態と生化学的解析(指導参考)
- [その他]
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研究課題名:低アレルゲン米の評価・検定手法の確立
予算区分 :補助(国費)
研究期間 :平成12年度(平成8〜12年)
研究担当者:柳原哲司
発表論文等:柳原哲司ら:米アレルギー抗原活性の米粒内存在部位、日本食品科学工学会誌(投稿中)、長谷川浩ら:米アレルギーの臨床調査(1,2)、第35回日本小児アレルギー学会抄録集(1998)
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