農業への新規参入における「後見人」の役割


[要約]
地域社会において幅広く面倒をみてくれる「後見人」をもつ新規参入者は、ソーシャルサポートに恵まれ、現状に対する満足度も高い。「後見人」をもつ新規参入者の比率は支援制度の整備に伴い増加している。研修の受入指導農家が「後見人」となる事例が増えていることから、「後見人」となりうる適切な受入指導農家の選定・紹介を行っていくことが重要である。
[キーワード]
新規参入、受入指導農家、後見人、ソーシャルサポート、支援制度
[担当]北農研・総合研究部・農村システム研
[連絡先]011-857-9309
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]行政・参考
[背景・ねらい]
北海道農業担い手育成センターが設立(95年)され、新規参入者を支援する制度が整備される中、その社会的な適応についても適切な支援が求められる。地域社会における「後見人」は、新規参入者の円滑な適応をたすける存在である。ここでは、「後見人」が果たす役割を整理することをねらいとする。
[成果の内容・特徴]
  1. 地域において幅広く面倒をみてくれる「後見人」をもつと認識している新規参入者の比率は、1996年以前の参入者では53.7%であったが、1997年以降の参入者では83.9%と、近年高まっている。「後見人」のサポート内容としては、地域住民・組織への紹介、農業技術の助言、農業機械の貸与、農地の紹介、お茶や食事への招待が50%を越えている。
  2. 日常生活における諸問題についてのソーシャルサポートを得られるか否かを「後見人」の有無別にみると、農業関連の実質的なサポートや、農業、地域に関する評価的サポート、また自己価値を高めるサポートについて、「後見人」がいる回答者がサポートを得ている比率が高い(表1)。「後見人」を中心として地域社会のネットワークにより深く組み込まれていることを示している。
  3. 現状についての満足度についても、就農場所の決定や、就農以来成し遂げてきたことについて、「後見人」がいる参入者はより高い満足度を示している(表2)。
  4. 1997年以降の参入者では、「後見人」が、「研修先農家」「同じ作目の農家」である比率が高く、研修の受入指導農家への助成や登録制など支援制度の充実の結果、研修の受入指導農家が「後見人」としての役割を担う事例が増加している。
  5. 公的機関の支援についての必要性については、「就農候補地域についての詳しい情報提供」、「道内の農地情報のデータベース化」に次いで「地域社会の窓口となる後見役の選定・紹介」を必要とする比率が高く、「後見人」獲得について公的支援が期待されている(表3)。受入指導農家が「後見人」となることが多い実態から、新規参入者の地域社会への定着を促進するためには、参入者の目的や志向に応じた受入指導農家の紹介に留意することが重要である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 新規参入者の地域社会適応を支援する施策検討の上で参考になる。

[その他]
研究課題名:新規参入者の地域社会への定着条件の解明
予算区分 :交付金
研究担当者:原(福与)珠里、天野哲郎、森嶋輝也
発表論文等:原(2001)第49回日本農村生活研究大会報告要旨:46-47
      原(2002)村落社会研究8(2):掲載予定

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