ミトコンドリアへの新規タンパク質輸送技術


[要約]
ミトコンドリアへのタンパク質輸送に必要な領域が、脱共役タンパク質遺伝子の第2ドメインにあることを明らかにした。この領域は、内在型のミトコンドリア輸送シグナルとして利用でき、また由来の異なる2種のタンパク質を両端に結合した形で、同時にミトコンドリアへ輸送する能力がある。
[キーワード]
ミトコンドリア、タンパク質輸送、脱共役タンパク質、内在型シグナル
[担当]北農研・地域基盤研究部・適応生態研究室
[連絡先]011-857-9211
[区分]北海道農業・基盤研究
[分類]科学・普及
[背景・ねらい]
植物のミトコンドリアゲノムやその遺伝子機能に関する研究は急速に発展しており、近年、シロイヌナズナとテンサイで相次いでゲノムの全塩基配列が決定されている。こうした中には、呼吸鎖に関与する遺伝子群のほか、農業上有用な形質である細胞質雄性不稔性の原因遺伝子も含まれている。本研究においては、これらの遺伝子を有効に利用するため、核へ遺伝子を導入し、遺伝子産物であるタンパク質をミトコンドリアへ輸送させる新しい技術の開発を目的としている。
[成果の内容・特徴]
  1. コムギより、核ゲノムにコードされたミトコンドリア脱共役タンパク質遺伝子を単離した。タンパク質レベルでの解析により、脱共役タンパク質は間違いなくミトコンドリアへ輸送される(図1)。
  2. 脱共役タンパク質遺伝子のミトコンドリアへのタンパク質輸送に必要な領域を特定するために、脱共役タンパク質遺伝子を3つの領域に分解し、それぞれをレポーター遺伝子であるGFPあるいはDsRed遺伝子と結合したコンストラクトを作製した。得られたコンストラクトを酵母細胞へ導入し、その蛍光シグナルの細胞内局在を観察した(図2図3)結果、ミトコンドリアへのタンパク質輸送に必要な領域は、脱共役タンパク質遺伝子の第2ドメインにある。
  3. このドメインによるミトコンドリアへのタンパク質輸送は、従来のN末端配列によるものとは異なり、中央部にあっても輸送することが可能である。また、第2ドメインの両端に結合した由来の異なる2種のタンパク質を同時にミトコンドリアへ輸送することができる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本方法は、ミトコンドリアへの新規なタンパク質輸送技術として植物・酵母等で広く活用できる。

[その他]
研究課題名:植物ミトコンドリアへの遺伝子産物ターゲッティング技術
予算区分 :組換えDNA
研究期間 :1999〜2001年度
研究担当者:半田裕一、村山誠治
発表論文等:Murayama and Handa (2000) Molecular & General Genetics 264:112-118.
      Handa et al. (2001) Molecular Genetics & Genomics 269:569-575.
      半田ら(2002)「UCP遺伝子由来のミトコンドリアへのタンパク質輸送ターゲッティングペプチド及びそれをコードするDNA」:特許出願準備中

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