ばれいしょ塊茎の低温貯蔵における糖変動様式


[要約]
低温貯蔵中のばれいしょ塊茎の糖変動様式は、品種により糖量低推移型、ショ糖増加型、還元糖増加型に分類できる。還元糖量の変動には酸性インベルターゼ活性が遺伝子発現のレベルで関与する。
[キーワード]
ばれいしょ、食品品質、低温貯蔵、糖含量、酸性インベルターゼ
[担当]北農研・畑作研究部・品質制御研究チーム、ばれいしょ育種研究室
[連絡先]0155-62-9278
[区分]北海道農業・流通利用
[分類]科学・普及
[背景・ねらい]
ばれいしょ塊茎は低温貯蔵すると一般にポテトチップス加工にマイナスとなる還元糖が増加するが、糖変動には品種間差がある。本研究では、増糖程度の異なる6品種、男しゃくいも・メークイン・キタアカリ(生食用主要品種)、ホワイトフライヤー・トヨシロ(ポテトチップス用品種)、インカのめざめ(黄肉新品種)を用いて、貯蔵中の糖変動の特性を明らかにするとともに、糖変動のメカニズムについて解明し、多様化する調理・加工ニーズに的確に応じた品種利用技術、品質制御技術開発に資する。
[成果の内容・特徴]
  1. ばれいしょ塊茎の貯蔵中の還元糖・ショ糖量は、20℃貯蔵では、いずれの品種もグルコース、フラクトース、ショ糖とも低く推移するが、4℃貯蔵では、品種により糖量低推移型(ホワイトフライヤー)、ショ糖増加型(インカのめざめ)、還元糖増加型(メークイン、男しゃくいも、キタアカリ、トヨシロ)の3タイプに分類できる。
  2. 糖変動にはショ糖を還元糖に分解する酸性インベルターゼの活性が関連する。酸性インベルターゼは還元糖増加型では1週間後以降、活性が増加するのに対し、糖量低推移型、ショ糖増加型ではきわめて低く推移し(図2)、低温貯蔵中のグルコース、フラクトースの変動には本酵素の活性の有無が関与する。
  3. 4℃貯蔵では酸性インベルターゼの遺伝子の特異的発現がみられるのに対し、20℃ではみられず、本酵素の活性は遺伝子発現レベルで調節されている(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 低温貯蔵における糖変動のメカニズムがさらに解明されれば糖変動の制御技術の開発につながる。
  2. 個々の品種の時期特異的な最適利用技術、新規利用技術および低温貯蔵の最適化技術の開発につながる。

平成13年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:ばれいしょ塊茎の糖変動様式(研究参考)
[具体的データ]
図1
[その他]
研究課題名:ばれいしょ塊茎の糖質変動の解明
予算区分 :交付金
研究期間 :2001-2003年度
研究担当者:遠藤千絵、小原(高田)明子、小林 晃、森 元幸、野田高弘、瀧川重信、山内宏昭
発表論文等:遠藤ら(2000)日本植物生理学会2000年度年会講要:101
      遠藤ら(2001)日本植物生理学会2001年度年会講要:190
      小田ら(2001)「黄色馬鈴薯食材および黄色馬鈴薯食品」特願2001-223850

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