デンプン分解性乳酸菌を利用した甘酒様飲料製造技術
- [要約]
- デンプン分解性乳酸菌ラクトバチルス・アミロヴォルス(Lactobacillus amylovorus)の培養液で米飯を糖化させることにより、従来の甘酒とまったく異なる、ほのかな甘さと爽やかな酸味を持った甘酒様飲料を製造できる。
- [キーワード]
- 甘酒、デンプン分解性乳酸菌、米飯
[担当]北農研・畑作研究部・流通システム研究チーム
[連絡先]0155-62-9280
[区分]北海道農業・流通利用
[分類]技術・普及
- [背景・ねらい]
- 甘酒は、米麹と米飯を混合して55〜60℃で約8時間糖化させ、適宜希釈後、煮沸したものである。甘酒の起源は古く、今日のように砂糖が甘味料として普及する以前の食生活においては重要な甘味食品であったが、最近の消費者の嗜好には必ずしも合致していない。そこで、香味の改善された甘酒様飲料を製造するために、米麹の代わりにヨーグルト用乳酸菌に近縁なデンプン分解性乳酸菌ラクトバチルス・アミロヴォルス(Lactobacillus amylovorus)の培養液を使用する方法を考案した。本成果情報は、従来の甘酒とはまったく異なる、ほのかな甘さと爽やかな酸味を持った甘酒様飲料及びその製造方法を提供するものである。
- [成果の内容・特徴]
- 製造方法は以下の通りである。
(1)デンプン分解性乳酸菌Lactobacillus amylovorus JCM 10628の菌体を一白金耳かき取って種培養液(表1)10mlに接種する。
(2)37℃、24時間静置培養後、遠心分離にて菌体を集め、105℃、30分間高圧滅菌した2%スキムミルク溶液5mlに懸濁する。
(3)この菌体懸濁液0.5mlを本培養液(表2)100mlに添加し、37℃、24時間静置培養したものを発酵液とする。
(4)発酵液に40gの炊いた米飯を添加して密閉容器に入れ、55℃、24時間置いて糖化させる。
(5)加熱後、冷まして出来上がる。
- 甘酒様飲料の特徴は以下の通りである。
(a)米と牛乳および健康に良い乳酸菌を原料としている。
(b)本培養液中の酵母エキスとして、人気の高いビール酵母を使用することもできる。
(c)グルコースのように直ぐには吸収されないデキストリンを主要な糖成分としているため、持続した運動へのエネルギー補給に効果がある。
(d)ほのかな甘味のため、最近の消費者の嗜好に合致している。
- [成果の活用面・留意点]
- 本成果情報で使用するデンプン分解性乳酸菌Lactobacillus amylovorus JCM 10628は、白菜から分離した菌株で、理化学研究所微生物系統保存施設(JCM)から購入可能である(6000円)。
- 製造の際にもっとも留意しなければならない点は糖化温度である。55℃以外の温度では、甘味と酸味のバランスが崩れる。37℃および45℃で糖化させると、乳酸発酵が進行し過ぎるために甘味に比べて酸味が強なり、65℃では乳酸発酵が完全に停止して酸味が少なくなる(表3)。
- [その他]
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研究課題名:デンプン分解性乳酸菌を利用した甘酒様飲料製造技術の開発
予算区分 :場特定
研究期間 :2000年度
研究担当者:小田有二、山内宏昭、一ノ瀬靖則
発表論文等:小田ら(2001)「甘酒様飲料及びその製造方法」:特願2001-184600
Oda et al. (2000)Food Microbiol.17:341-347.
Oda et al. (2002)Food Sci. Technol. Res. :in press.
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