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[背景・ねらい] |
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北海道の水稲直播栽培は作期が短いため、生育遅延を防ぐために早生品種が用いられ、主力の中生品種は直播に適していない。しかし、芽出し種子を用いると初期生育や出穂期の前進が可能であり、中生品種の利用が期待できる。ここでは従来の乾田直播の作業体系のなかで芽出し種子を適用できる播種機を開発し、播種機の性能と芽出し播種の栽培特性を検討する。 |
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[成果の内容・特徴] |
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1. |
芽出し処理は、吸水籾を30℃の温水に浸し、約40時間加温する。この処理により芽長が2mm程度の芽出し種子が得られる。 |
2. |
芽出し種子の播種には乾田直播に用いられる従来の逆転ロータリシーダを利用できるが、新たに開発した浅耕逆転ロータリシーダが適する(図1)。この播種機は、従来機に比べて大径で溝の深い繰り出しロールを使用して幼芽の損傷を軽減する。また、浅耕により表層の砕土率を高め、整地板とディスク型作溝器、鎮圧ローラによって播種深度を安定させる(表1)。 |
3. |
播種機によって繰り出される芽出し種子は、芽長が長くなるほど損傷割合が増加する(図2)。また、苗立ち率は芽長が長いほど種子の損傷割合に応じて低下する(図3)。芽長が2mmの芽出し種子は損傷割合が約10%であり、酸素発生剤粉衣種子に比べて苗立ち率の低下は10%程度にとどまる。 |
4. |
芽出し播きは慣行の酸素発生剤粉衣種子に比べて生育が前進して出穂期で1〜2日、登熟期で1〜3日早まることから、「ほしのゆめ」では収量や登熟割合が高まり、中生品種の栽培が安定する(表2)。 |
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[成果の活用面・留意点] |
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1. |
芽出し種子は、苗立ち率の低下に見合った播種量を設定する必要がある。 |
2. |
道央以南の初期生育の良い稲作安定地域に適用し、播種期が早いと霜害を受ける恐れがあるため、極端な早播きは避ける。 |
3. |
酸素発生剤粉衣種子に比べて浮き苗が発生しやすいため、播種深度は1cm以内として確実に覆土されるよう、鎮圧ローラの高さを変えてディスク型作溝器の溝深さを調節する。 |
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