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| [背景・ねらい] |
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近年、都市住民の側から様々な形でグリーン・ツーリズムへのニーズが高まっている。それに対して、ファーム・インや体験観光農園などがネットワークを組んで互いに顧客を紹介し合うことで、この多様なニーズに応えようとする動きが各地で見られる。しかし、全てが成功しているわけではなく、その問題点の分析手法は未だ確立されていない。そこで、体験観光農園のネットワークの形成過程を分析するためのモデルを新たに構築する。 |
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| [成果の内容・特徴] |
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| 1. |
複数の主体が一定のルールに基づき互いに連携先を選びながら、最終的に安定的な状態へと至る過程をシミュレートできるランドスケープ理論の考え方を、ネットワーク分析と新たに組み合わせて、ルールの異なる2種類の顧客紹介を同時に説明できるモデルを構築した(図1)。このモデルを利用することにより、「密度」および「集中度」という指標から、ファーム・インを含む体験観光農園のネットワークの形成過程を動態的に分析することが可能となる。 |
| 2. |
S町では観光農業の振興を図る研究会が組織されており、先駆者としてその立ち上げに係わったファーム・イン(F1)は、全ての会員農園に無料で顧客紹介を行っている(図1)。このルールを追加してシミュレーションを行った結果、ネットワーク密度は4巡目の最終状態にかけて、ファーム・インがその行動を取らなかった場合と比べて1.5倍にまで上昇する(図2)。このことから、初期段階でリーダーシップをとるファーム・インの存在がネットワーク密度の向上に大きく貢献していることが分かる。 |
| 3. |
全ての会員農園に対するファーム・イン(F1)の顧客紹介は、ネットワーク全体の「集中度」を上げるが、これはファーム・イン(F1)への依存度が高まっていることでもある(図3・図4)。そこで次の段階では、特定のメンバーに依存することのない各体験観光農園の自立的な活性化のために、無料での顧客紹介を行うリーダーを新たに養成し、ネットワークを分散型に移行させることが課題となる。 |
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| [成果の活用面・留意点] |
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| 1. |
既存のネットワーク分析手法と組み合わせることにより、関係パターンの類似性やネットワーク内の派閥関係などの分析が行える。 |
| 2. |
このモデルは、各地域に特有のルールを追加することで、北海道に限らず、体験観光農園等のネットワークの分析に適用でき、問題点や改善方向の検討に用いることができる。 |
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