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1965年以降の空中写真判読結果をもとに久著呂川の直線化した明渠排水下端から約2km下流付近までの湿原内の林相変化を時系列的に解析すると、ハンノキ林が増加している場所は河川の近傍ではなく、むしろ河川から離れた後背地である(データ略)。 |
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比較的自然が保たれているチルワツナイ川流域と土砂流入の増加が懸念されている久著呂川流域において、植生変化のなかった地点とハンノキ林が増加した地点のそれぞれでハンノキ林を調査すると、植生変化のなかったチルワツナイ川流域(図1、CHライン)のハンノキ林は樹高・胸高直径が様々な階級からなる樹幹で成立しているのに対して、久著呂川流域(図1、Kライン)のハンノキ林はばらつきが小さく、一斉に侵入ないし萌芽再生したものと考えられる(データ略)。また、Kラインでは、川から離れるほどハンノキ林の樹高が低くなり密度は増加している(図2)。 |
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チルワツナイ川流域(CHライン)においては、草本植生でもハンノキ林でもともに地表面に向けて有機物が増加しているのに対して、久著呂川流域(Kライン)では、地表面に向かって有機物が減り、鉱質物が増加している(図3の表層部分)。 |
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冬季に凍結した泥炭土壌をコアで採取することにより、後背湿地の湛水面下にある泥炭土壌の表層を未攪乱で採取できる。未攪乱土壌について深さ毎に137Cs濃度を分析することにより、1960年代前半以降の堆積深度が推定でき、ハンノキ林拡大地点の鉱質物の多い表層部分は近年堆積したことがわかる(図3、図4)。 |
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以上の結果から、土砂流入増加は釧路湿原におけるハンノキ林拡大の一因である。また、湿原の過去の環境変化の推測には、未攪乱の泥炭土壌の採取と137Cs分析の利用が可能である。凍結時の土壌コア採取は、寒冷地における後背湿地で未攪乱土壌を得る有効な方法である。 |