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社会的な環境圧力の増大のもとで、酪農経営の持続的展開には、環境管理能力の向上による環境基盤の獲得が重要となる。強い環境圧力のもとにある奈良県のメガファーム・Jファームでは、次がみられる。
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Jファームは環境との調和を経営理念とする。開場時の投資の19%がふん尿処理施設に向けられ、環境問題発生の未然防止−未来指向−が徹底されている(表1)。 |
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未来指向は、住民との良好な関係形成による経営の不安定化要因の解消と同時に、従業員の就労意欲向上、企業との有利な取引関係構築、自治体からの積極的な支援導出による経済性向上の余地拡大につながっている。 |
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本道の酪農経営は、弱い環境圧力、保守的な経営指向、限られた環境コスト負担能力のもとで、環境対応は問題への対処による当面の持続性の確保として行われる。A町では、H川流域の酪農経営の環境対応の誘導に成功してきた。しかし、環境コストは、経済性にマイナスに作用し、酪農経営の展開の制約要因となっていた。 |
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酪農経営の未来指向を導くため、地域的な取り組みの推進が想定される。酪農経営の環境対応の地域的な推進により、地域的な環境負荷量の削減と同時に、畜産物のブランド化や差別価格の獲得による酪農経営の経済性改善や、農産加工や農村観光振興など地域的な経済効果派生の余地が拡大する(図1)。環境対応の地域的な推進には、酪農経営に対し、法規制等への対処的行動を求める「規制的アプローチ」だけでなく、環境対応を地域振興や産地展開の必要条件として位置づけ、新たな体制への移行を誘導する「自発的アプローチ」が重要となる(図2、3)。 |