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更新時に5t/10aを越えるたい肥を施用すると、維持管理時に化学肥料を減らしても、チモシー・シロクローバ混播草地では、マメ科牧草が衰退する(図1)。 |
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チモシー単播草地で施肥標準区に近い乾物収量を確保するためには、たい肥施用量にかかわらず化学肥料の施用が必要である。化学肥料を北海道施肥標準の半量施肥する条件(1/2施肥標準区と表記)では、更新2年目には、たい肥施用量5t/10a程度で収量が頭打ちとなる(図2)。このように、チモシー単播草地ではたい肥施用量5t/10aの1/2施肥標準区において効率的な肥料効果と施肥標準区に近い収量水準が得られる。 |
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そこで当条件の年間養分吸収量からたい肥無施用条件の養分吸収量を差し引けば、たい肥施用による養分供給量が見積もられ、この量に応じた化学肥料の減肥が可能となる。こうして得られた減肥可能量は、窒素と更新2年目のカリでは従来と同程度となり、リンと更新3年目のカリについては新たな値を設定できる(表1)。 |
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上記の窒素の減肥可能量をたい肥由来の投入窒素量とみなし、チモシー単播草地の窒素収支を求めて浸透水中の無機態窒素濃度を試算すると、地下水汚染のリスクはたい肥施用量とともに増大する(表2)。 |
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以上により、5t/10aを越えるたい肥の施用は、乾物収量に対する肥料効果の低下、マメ科牧草の衰退、環境負荷の増大を引き起こす恐れがある。そこで、寒地火山灰草地の更新時におけるたい肥の施用限界量を5t/10aとする。 |