| 1. |
草地の浸透能は10mm/h前後と小さいのに対し、林帯の浸透能は数百mm/hと大きいため(図-1)、降雨時に草地で生じる表面流は林帯地表面で浸透し、濾過作用を受ける。 |
| 2. |
調査地域には火山灰が分布し、深さ1.5m付近に難透水層が存在する。それゆえに林帯地表面で浸透した雨水は、難透水層上に貯留され、傾斜方向に徐々に移動し、平均2〜3日の滞留時間を有する中間流出水として排水路に流入する。 |
| 3. |
林帯あり流域と林帯なし流域(図-2)では、単位流域面積あたり養分投入量や平水時の水質(表-1)に大きな差はなく、降雨流出時の水質を比較するのに適した流域である。 |
| 4. |
林帯あり流域と林帯なし流域の間で降雨流出水の全窒素と全リンの濃度を比べると、非凍結期の比流量(面積あたりの流量)が約300 l/s/km2以上の場合には両流域の水質に明確な違いはみられないが、この値未満の場合には林帯あり流域の方が低い傾向を示す(図-3、表-2)。しかし、土壌凍結期には、林帯での浄化機能が発揮されず、林帯あり流域の方がこれらの濃度が高くなることがある(図-4)。 |
| 5. |
非凍結期のこれらの流域からの合計流出量を、300 l/s/km2未満の流量時の流出量およびこれ以上の流量時の流出量に区分すると、その比は0.63:0.37である。この比を用いて、各流域の非凍結期の水質平均値(=300l/s/km2未満での濃度×0.63+300l/s/km2以上での濃度×0.37)を試算した(表-2)。試算結果から、林帯が非凍結期において草地からの流出水中の全窒素と全リンを概ね20%低減させることがわかる。 |