道東地域におけるメドウフェスク「ハルサカエ」の放牧利用法

[要約]

メドウフェスク(以下MF)「ハルサカエ」は土壌凍結地帯で高い永続性を有し、泌乳牛50頭の放牧で、チモシー(以下TY)放牧地に比べ、8月以降の面積を2ha少なくすることができる。地下茎型イネ科草優占草地も、作溝法による簡易更新でMF優占草地に植生改善でき、適切な放牧地管理で飼料自給率70%で8,000kg程度の乳生産が期待できる。

[キーワード]

集約放牧、メドウフェスク、ハルサカエ、土壌凍結地帯

[担当] 根釧農試・研究部・作物科、北海道農研・集約放牧研究チーム
[連絡先] 電話 0153-72-2004,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地、畜産草地
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
土壌凍結地帯における放牧主体経営の酪農家が、低コストで高い飼料自給率による牛乳生産を可能にするための技術として、夏以降の生産性の低下が穏やかなMFの集約放牧技術を明らかにし草地利用性の向上に寄与する。
[成果の内容・特徴]
  1. MF「ハルサカエ」主体草地の年間乾物再生草量は平均865.8kgDM/10aで、土壌凍結地帯で利用上問題のない、高い永続性を有する(図1)。
  2. MFおよびTY草地の季節生産性を明らかにした。泌乳牛50頭の放牧飼養に必要な面積は、MF主体放牧地では6-7月に14ha、8-9月に18.3ha(内4.3ha兼用地)、TY放牧地では6-7月に14ha、8-9月に20.3ha(内6.3ha兼用地)が必要で、MF主体放牧地を用いるとTY主体放牧地に比べ8月以降の放牧地面積を2ha少なくすることができる(表1表2)。
  3. MF放牧地では、草丈15-20cm程度で早期に放牧開始すると、掃除刈りせずに30cm以下の短草利用ができるが、草丈が伸びた場合は、7月上旬の掃除刈り(刈高高め)の実施が望ましい(表3)。また、草丈40cmまでは昼夜放牧で10-15kgDM/頭/日の放牧草を摂取する。MF草地とTY草地を組み合わせた放牧においても、飼料自給率約70%(TDNベース)で8000kg程度の乳生産が可能である(表4)。
  4. MF「ハルサカエ」は地下茎型イネ科草(シバムギ・ケンタッキーブルーグラス)優占草地に、簡易更新(作溝法)による導入が可能で、1回目の施工後、翌年2回目の施工で4年目にはMF被度が50%以上の優占草地に植生改善することができる。年間合計乾物再生草量は地下茎型イネ科草優占放牧地比で30%〜80%程度の増加が期待できる(図2)。簡易更新の作業方法は「簡易更新マニュアル」を参考にすると良い(mailto:http://www.agri.pref.hokkaido.jp/konsen/labo/sakumotsu/kankoumanudl.htm)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 土壌凍結地帯における集約放牧草地に適用する。
  2. 短草利用が続き、MF割合が低下した場合は、逐次、簡易更新による播種を行う。
  3. リードカナリーグラス草地への簡易更新によるMF導入については検討していない。
  4. 簡易更新は春〜夏にかけて施工できるが、1シーズン中に2回の作溝播種を行うと草地がサイコロ状にめくれ上る場合がある。
  5. 出穂茎が出現する以前に掃除刈りを実施する場合は、刈高は低めが望ましい。
  6. 分娩後日数50日までは個体によるエネルギー不足に留意し、適宜併給飼料の調節を行う。
[具体的データ]

 

 

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 地域条件を活かした健全な家畜飼養のための放牧技術の開発
課題ID 212-d
予算区分 交付金(集約放牧)
研究期間 2003〜2007年度
研究担当者 牧野 司、林 拓、佐藤尚親、三枝俊哉、西道由紀子、原 仁、松村哲夫、須藤賢司、篠田 満、小林 朋也
発表論文等 1)牧野ら(2005)北草研報:63 2)牧野ら(2006)北草研報:46
3)松村ら(2006)北草研報:45 4)松村ら(2006)北草研講演要旨:34