黒毛和種雌牛の繁殖性低下要因と対策

[要約]

黒毛和種繁殖農家の分娩間隔延長は、発情の見逃し、不明瞭な発情徴候、高産次牛繋養、不妊牛摘出不十分などが要因となっている。繁殖性改善のためには、分娩前後の適切な栄養管理、1日2回の発情観察が重要である。

[キーワード]

黒毛和種、繁殖性低下要因、分娩前後、栄養管理、発情観察

[担当] 道立畜試・技術体系化チーム(技術普及部、病態生理科、肉牛飼養科)
[連絡先] 電話 0156-64-5321,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
 道内の繁殖雌牛の平均分娩間隔は平成13年が12.9ヶ月であったのに対し現在13.8ヶ月と長くなっており、分娩間隔の短縮は黒毛和種生産振興における重要な課題となっている。
 そこで黒毛和種繁殖経営農家における繁殖成績や管理の実態調査から、繁殖性を低下させている要因を明らかにし、1年1産に向けた繁殖性改善のための対策を提案する。また、場内試験を実施し、分娩前後の牛の管理が繁殖成績に及ぼす影響について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 調査した繁殖経営9戸の管理と繁殖成績、問題点および改善策を表1に整理する。分娩間隔は363〜428日、初回授精日数は56〜95日、空胎日数は76〜127日、発情発見率は55〜87%である。初回授精日数および分娩間隔延長の要因は発情の見逃し、無発情、発情徴候不明瞭、高産次牛繋養、不妊牛摘出不十分などである。発情観察の強化、発情発見補助器具の使用、発情誘起処理、計画的な繁殖雌牛の更新、早期妊娠鑑定などが対策としてあげられる。
  2. 膣内留置型黄体ホルモン製剤(CIDR)による発情同期化を試みた農家の成績(表2)では、CIDR挿入(10または15日間)開始から74日目までに全頭(18頭)が受胎したことから、当処理は発情観察作業の省力化手段として有効である。
  3. 分娩前後のTDN充足率を低・低区(60・60%)、低・中区(60・80%)、適・中区(100・80%)、適・適区(100・100%)の4区を設定し、黒毛和種雌牛それぞれ8、10、11、6頭を供試し比較したところ、母牛の分娩後体重変化は栄養充足状況を反映し、分娩後体重をほぼ維持していたのは適・適区のみである。また、初回発情日数は低・低区で74日と最も長く、他の3区では62〜66日と差がない。人工授精は分娩後20〜112日で行ったが、妊娠率は低・低区のみが50%と低く、初回授精受胎率はTDN充足率が高いほど良好な傾向がみられ、適・適区で83%と最も高い(表3)。
  4. 授乳期間が0日の牛では子宮回復日数が46日と遅延したが、4週以内と13週では約30日となり遅れは見られない。また、授乳期間 0日と4週以内ではともに初回排卵日数は約20日、初回発情日数も28日以下となり、13週の66、66日に比べて大幅に短縮する(表4)。これらは、子牛による吸乳刺激が無いためである。
  5. 発情観察回数を1日2回(朝:8時頃、夕:18時頃)と1回(朝または夕)で比較すると1日2回で92%、朝のみで83%、夕のみで49%で、夕方のみの観察では大幅に発見率が低下する(表5)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本試験の農家の調査事例は十勝管内の事例である。
[具体的データ]

 

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 北海道における黒毛和種の繁殖性向上
予算区分 国費補助(革新的農業技術導入促進事業)
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 山本裕介、櫻井由絵、大井幹記、南橋 昭
発表論文等