子牛の集団哺育農場における衛生管理技術

[要約]

子牛の集団哺育農場では牛呼吸器病症候群(BRDC)などの集団発生の可能性があるため、導入子牛の着地検査、牛舎消毒、ワクチン接種などの衛生管理が重要であり、集団哺育農場における疾病予防のための衛生管理技術について提示する。

[キーワード]

子牛、集団哺育、牛呼吸器病症候群(BRDC)、ワクチン接種、衛生管理技術

[担当] 道立畜試・基盤研究部・感染予防科、家畜研究部・肉牛育種科
[連絡先] 電話 0156-64-5321,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
酪農・畜産の家畜生産現場では大規模・集約化が進み、子牛の集団哺育農場が増加し、下痢症や牛呼吸器病症候群(BRDC)などの発生が問題となっている。本課題では、子牛疾病の発生要因を解析し、できるだけ抗生物質を使わずに感染症を予防する衛生管理プログラム指針を示す。
[成果の内容・特徴]
  1. 子牛の集団哺育農場8戸の子牛152頭の鼻腔内スワブ410検体から、BRDCの原因となるPasteurella multocida(Pm), Mannheimia haemolytica (Mh), マイコプラズマ(M.dispar, M. bovirhinis)が検出された。A農場では子牛導入時には病原微生物は検出されず、導入後日数が経過すると牛舎内に常在化する病原微生物に感染し、Pm, Mh, マイコプラズマが検出される(図1)。隔離施設での導入子牛の着地検査や定期的な牛舎消毒が必要であり、子牛導入時の着地検査により、子牛の観察を強化し、異常子牛の早期発見が重要である。
  2. 呼吸器病予防ワクチン接種農場における子牛血清中ウイルス抗体検査では、ワクチン接種による抗体上昇が十分でない農場がみられることから、移行抗体の保有状況、野外ウイルスの流行や疾病発生状況などを考慮しながら、ワクチンの種類や接種時期を設定する(図2)。
  3. 子牛の死廃率が10%以上の疾病多発農場3戸において、寒冷対策や初乳給与法の見直し、子牛導入時の着地検査による異常子牛の早期発見、ワクチン接種や薬剤投与のプログラムの変更などの対策を実施した結果、子牛の死廃率を5%以下に低減できた(表1)。預託哺育システムにおける疾病予防のための衛生管理プログラム指針として、関係機関の連携、委託農場における新生子牛と母牛の管理、預託農場における子牛の着地検査と哺育牛の衛生管理、衛生管理プログラムの評価と見直しについて提示する(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. ホルスタイン種雌子牛預託農場や肥育素牛生産農場における感染症予防対策に活用できる。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 抗生物質の使用を低減するための子牛の衛生管理技術
予算区分 道費
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 小原潤子、二階堂聡、平井綱雄、藤川朗、鹿島聖志、扇勉
発表論文等