2分離受精卵からのクローン胚生産技術

[要約]

リクローン胚生産におけるドナー細胞数の平均は27.6個で、リクローン胚の発生率は35.0%である。また、受精卵から高率にES様細胞を作出でき、ES様細胞から核移植胚の作出が可能である。

[キーワード]

牛、受精卵、2分離、クローン、ES様細胞、産肉能力検定

[担当] 道立畜試・基盤研究部・受精卵移植科
[連絡先] 電話 0156-64-5321,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地
[分類] 研究・参考

[背景・ねらい]
受精卵クローン牛を種雄牛造成の際の産肉能力検定に利用するため、2分離受精卵の一方から種雄牛候補を生産し、もう一方から検定に供するクローン牛を3頭以上生産する技術の確立を目指す。ドナー細胞を増加させる技術として核移植を繰り返して実施するリクローン技術、受精卵を培養してES様細胞を作出する技術について検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 桑実胚および小型化桑実胚の2分離方法として、再集合法、吸引法および分離法を2分離後の培養生存性で比較したところ、吸引法および分離法で2分離した受精卵の生存率が高く(表1)、これらの方法が適当である。
  2. 性判別2分離受精卵の受胎率は33.8%である(表2)。また、Cランク受精卵は受胎例が得られない。
  3. 性判別2分離受精卵由来のリクローン胚の作出を目的に3回の実験を行う。それぞれドナー受精卵3、3および2個を用いてクローン胚を作出し、これらのクローン胚のうち良好と思われる胚(ドナー受精卵C、E、FおよびH由来のクローン胚)をドナー胚としてリクローン胚を作出する(表3)。1胚当たりドナー細胞数の平均は27.6個で、ドナー胚数におけるリクローン胚の発生率は35.0%と良好であるが、クローン胚が得られない例(ドナー受精卵G)、十分な数のリクローン胚が得られない例(ドナー受精卵C)が見られる。
  4. 新鮮および凍結受精卵から高率にES様細胞が作出できる(表4)。凍結融解したES様細胞の接着率および増殖率は、支持細胞を使用した場合は100%であり、ES様細胞の凍結保存が可能である。
  5. ES様細胞を用いた核移植におけるレシピエント卵子の活性化法は、体細胞クローン型の胚の発生率が10%と受精卵クローン型の3%と比較して高い。また、ES様細胞をドナー細胞とする核移植胚の発生率は11.6%で、得られた25個の核移植胚のうち10個を受胚牛に移植し、3頭の受胎例が得られる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 黒毛和種種雄牛候補の産肉能力検定確立のための資料とする。
  2. クローン胚からのES様細胞の作出は検討していない。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 2分離胚からの安定的クローン牛生産技術の確立
ES様細胞を用いたクローン胚の安定的多量作出技術の開発
予算区分 道費
研究期間 2002-2005年度
研究担当者 森安 悟、平山博樹、澤井 健、尾上貞雄、宝寄山直裕、南橋 昭、遠谷良樹、扇 勉
発表論文等